狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

永遠に僕のもの/新たな青春映画の名作が誕生

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ブログのタイトルにあるように、「汚れた血」というフランス映画が好きな私。
ドラマもサスペンスもミュージカルも、はたまたSF要素まで入っているっていう、ある意味万能な映画ですが、その「汚れた血」で最も重要な要素が青春・恋愛映画っていう部分。。
最近の恋愛要素のある映画ってわりとただの恋愛映画か、アクションのスキマに恋愛が入ってるものばかりな気がしますが、ドラマ性と恋愛がガッツリ入ってる作品って名作になることが多いですよね。
今回ご紹介する作品は、その典型のような作品です。。「永遠に僕のもの」
アルゼンチンの映画ってなかなか日本では公開されませんが、この作品は国籍なんて軽く超越していて、全世界の若者に刺さる映画だと思いますね。。LGBTQが認知されてない我が国ではどうかわかりませんが。。

1971年から1972年にかけて強盗と殺人を繰り返し、「黒い天使」と呼ばれたカルロス・ロブレド・プッチの半生にインスパイアされた青春クライムムービーがこの「永遠に僕のもの」です。
正直、ストーリーなんて関係なくって、ポスターやDVDのビジュアルを手にとってビビビってきた方は、ほとんどハズレることはないでしょう。私が運営してる「リーバ」というスマホケース販売のショップでもこの映画のオリジナルスマホケースも制作中です。
それくらい主人公がチャーミングで原題通り天使そのものです。
私も公開時に見に行きましたが、レビューの点数も公開当初それほど高くなかったのでちょっと不安だったんですけど、自分の感性を信じて見に行った結果、、大アタリでした。

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主役を演じたロレンソ・フェロ君はオーディションで選ばれたらしいのですが、監督曰く彼以外のオーディションを受けた人はすべて、彼がカルリートスである事を証明するためのものだった」というヒドイ事を言ってますが、ホントその通り彼以外には考えられなかったと思います。
カーリーヘアがキュートでグラマラスでTレックスのマークボランを彷彿とさせるロックスターっぷりでかっこいいですね。
そして劇中でも触れられるのですが、ぽってりとした唇、、、このくちびるが彼の最大の魅力でしょう。超セクシーで、エロいです!
また普段はヘラヘラしたかわいい笑顔のカルリートスですが、たまに見せる「男」の表情が女性の方にはたまらないんでしょうねー。
ま、私もキスしたいとは思いませんが、ちょっと触ってみたい感じはあります。
犯罪映画っていうのは昔からカッコ良ければそれでいい!ってとこがありますが、映画の歴史において語られてもおかしくないくらい、魅力的なキャラクターだと個人的に思います。
この映画、私みたいなオッさんじゃなくて、やっぱり若い子に観てもらいたいです。
最近は男でも脱毛する時代なので「ワイルド」って言葉が死語になってますが、こういう良い意味で「不良」な感覚って、やっぱり男の子には必要なんですよね。「リーバ」でもワイルドなオリジナルスマホケース結構揃えてます。。
ここまで犯罪者にならなくていいですが、この映画全体に流れるかっこいい雰囲気を味わって、映画も好きになってほしいものです。

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カルリートスが 思いをよせるラモンを演じるチノ・ダリン君ですが、、こちらは、、個人的にはイマイチですね。

古い感じの男前で、時代背景的に1971年なので、こういう濃い顔の人でもおかしくないんですが、、その辺はロレンソ・フェロ君にあわせた感じで、現代的にもうちょっと甘い系の顔の人の方が共感された気がしますね。。
それにこのラモン君、ちょっと痛いキャラというか、粗雑でおつむも悪そうですし、よくわからないミーハー加減で、成り上がるためには何でもするし、「お前大丈夫か?」っていうキャラ設定なんですが、、微妙でした。
こんな男に、あの魅力的なカルリートスが惚れるかよ!って思うのは私だけでしょうか。。

あと印象的なキャラはカルリートスとラモン、両方のお母さん。
ラモンのお母さんは結構熟年ですがフェロモン全開で、悪女とまではいいませんが、いい感じで男をたぶらかせそうな女性で、でも旦那には意外と服従している感があり、印象的なキャラクターでした。

そしてカルリートスのお母さんは対極で、息子が悪いことをしてることを知りながら、でも息子を盲目的に愛し、彼を守りたいと思う、母親というイメージそのもののお母さん。
物語後半になってくると、このお母さんの息子へのまなざしがいい感じできいてくるんですよね、、地味ですが、とても重要なキャラを演じたセシリア・ロスさん。
素晴らしい女優さんです。

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タイトルからもちょっと連想できる通り、BLっぽい雰囲気も散りばめられてはいますが、この辺を期待して見に行く方は、正直肩透かしを食らうと思います。
BLっぽい要素を入れた映画って「ムーンライト」とか「君の名前で僕をよんで」とかの名作が昨今ありますからね。
直接的な表現は、ちょっとだけ出てきますが、BL好きの人にオススメってほどではないです、、参考までに。 
以外とカルリートス君のおなかがちょっぴりポテッとしていて、いい感じでだらしないところがいいですね。
変に細マッチョとかだとイケメンムービーになりそうですが「好きなものだけ食べてます!」っていう体つきが自然体でいいです。
そういえば食事のシーンが結構印象的ですね。
特に中盤の食事シーンは、カルリートスを優しいまなざしで見つめるママの表情が印象深いです。

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予告編とかにも登場するのでネタバレって感じではありませんが、この映画の印象的な場面で、強盗に入った宝石店でカルリートスがイヤリングをする場面がでてきます。
そこでラモンがマリリンモンローみたいだとつぶやくシーンがあるのですが、このカルリートスはホント妖しくてきれいですね!
で、その後ラモンがカルリートスに顔を寄せて鏡を覗き込み、銃をかまえて「ゲバラカストロ」と言うのですが、カルリートスはそこですぐ「エビータとベロン」と言い直すという場面がでてきます。
このシーン、セリフだけでこの2人のキャラを明確にあらわしてるシーンだと思いますね。
ラモンは自分たちをキューバ革命の英雄にみたてた「バディ」としてマッチョに表現しているのに対して、カルリートスは母国アルゼンチンの大統領と夫人であったエビータとベロンという、いってみれば男と女の関係におきかえて表現してるのです。
ラモン気づけよ!って感じですよね。。

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他にもバイクのシーンやダンスのシーンなど名シーンをあげたらきりがない映画ですが、ほんと絵になる描写が多くてそれだけでも見ていて楽しい気分になります。
もちろん濃密な脚本の映画もいいんですが、こういう映像を見ているだけで幸せになってくる感覚が、本来映画がもってるパワーだと思うんですよね。
映画館で大きいスクリーンで、美しい映像を見る贅沢。これこそ映画の醍醐味だと思います。

ストーリーやキャスト、映像など色々な面で魅力的な作品なのですが、普段グラフィックデザイナーをしてる私にとってどうしても注目してしまいますが、レトロでポップな美術やファッションが超たまりません!
赤や緑といった色が印象的なこの作品ですが、強盗におしいる家の家具やら、ナイトシーンの美術や照明しかり、ヨーロッパの映画に通じるような色彩で、おしゃれ映画としての機能も十分に果たしてます。
実際1971年のアルゼンチンがこんなにオシャレだったとは思いませんが、1970年前後の世界的に政治も文化も激動だった時代の空気感がなせる技というか、この時代が生み出すファンタジー感をうまく映像にとりいれていると思います。
それに最近は音楽のかっこいい映画が増えましたが、この作品もロックナンバーを中心とした音楽がかっこいいですね。
てっきり主題歌はアニマルズの「朝日のあたる家」だと思ってましたが、演奏してるバンドが違うらしいです。

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最初にこの映画を観終わって感じたのは、音楽・ファッション・そしてそれに負けないくらいの魅力的なストーリー、それにハズし方という点でも、ヴィンセント・ギャロのワンマン映画バッファロー66」を何となく思い出してしまいました。
多分「バッファロー66」が好きな方は、100%満足できる映画だと思います。 
私は上映2週目と4週目に二回見に行きましたが、どちらもそこそこの入りで、実際この映画がどのくらいヒットしたかはわかりませんが、90年代くらいなら渋谷のシネマライズに行列ができるくらいの作品だと思います。
レンタルの稼働率がどうなってるのかは全くわかりませんが、こういったミニシアター系の作品が少しでも話題を集めヒットしてくれることを、一映画ファンとして切に願う次第であります。

久しぶりに「この手の映画」の大当たりに出会った感じで、何度も言いますがオススメいたします!
ルイス・オルテガ監督とロレンソ・フェロ君は今後も期待したいですね。
またアルゼンチン映画おもしろいじゃないですか。。今後もこういった南米や欧米以外の第三国の映画がいっぱい日本で上映されるよう願います。

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