大人がハマるヒーロー映画「ウォッチメン」
2009年公開の映画「ウォッチメン」。
原作の「ウォッチメン」ファンの間で賛否両論だったこの映画、私はドラマ版「ウォッチメン」が凄いという噂をきいて、まず原作を取り寄せてみたものの、、はじめてのアメコミ...特にコマ割りの読み辛さもあってなかなか読み進まず、先に映画の方をざっと見るつもりでしたが...ここでどハマりしました!
ヒーローものの仮面をかぶった100%大人の映画でしたからね。
まずなんと言ってもやはりラストの結論ですね、スゴイのは。
エンタメ的には究極の煮えきらない結論なのですが、いかにも不条理で、しかしある意味現実的な大人な結論に魅了された人も多いんのではないでしょうか。
原作の巨大イカの破壊行為を映画だとDr.マンハッタンの爆発エネルギーにおきかえてますが、原作のグロテスクなイカを説得力あるビジュアルにするのはかなりの困難ですので、映画的にはうまく処理した感じですね。
でもイカっていうところがシュールかつ狂っていて、私は好きですが。。
実際にコロナで戦争が停止した地域もあるわけで、ある意味人類共通の外的の存在が戦争に対しての最大の抑止力になるということが証明されましたからね。
ツッコミどころはあるにしても、こういう煮えきらない結末で終わるヒーローものって、記憶にないですね。
「JOKER」でさえちょっとしたカタルシスが最後にあったのにウォッチメンは肩透かしですから。。
そしてもう一つのハマり要素と言えば、やはりロールシャッハです。
このキャラクター、完全にオッサン的萌えキャラですね。
究極にエモい奴で、鉄の意思というか自分の信念を曲げるくらいなら殺してくれっていうキャラですから。
全く手に追えないワガママ野郎で、悪い奴には徹底的に酷い事をするのですが、このキャラ、実は世間の声の代弁者的存在だから支持されるのも当たり前ですね。
どんな犯罪者でも法的手順を受けて刑が下されるから、長い年月を要するし、減刑される場合もあるわけで「そんな奴は許さないっ!」というのがロールシャッハの手法ですからね、、共感されるわけです。
だから本当の意味で正義かと言われると「?」ですね、感情のみで動くから。
これはドラマに出てきたフーデットジャスティスにも言えますし、他のヒーローたちも結局自分の中の正義で行動しているわけだから、結局誰ひとり信用できないんですよね。
国際政治をヒーローに置き換えてる様なもので、みんなそれぞれの利権で動いてるだけで、このあたりがある程度のオトナにならないと楽しめないところですし、でもオトナになるとすごく現実とリンクしていて楽しめるとこですね。
だから世間の考えに一番近いのがロールシャッハで、ある意味コメディアンも酷い男ですが、権力にべったりのところなど凄い人間臭いし、ロールシャッハの次にリアルな存在がコメディアンでしょうか。
この人がなぜヒーローになったのかっというのは謎ですが。。
様々な見せ方で現実に近い世界を見せているのが、原作、そして映画版のウォッチメンですが、今回のドラマシリーズはその精神を十二分に受け継いでますし、ある意味、現代のアメリカ社会にとって最もリアルなテーマを扱っただけに、支持されたのもわかります。
ヒーローものと認識しなくても見れるドラマですから。
映画版はいろいろ言われてますが、原作の素晴らしさがかなり伝わっていると思いますし、このテーマを2・3時間で扱うこと自体がかなりのハードルだと考えるとがんばったと思います。
同じザックスナイダー監督の「スーパーマンvsバットマン」と比べたら、格段に素晴らしい出来だと思います。
個人的には全然おすすめなので、ドラマを見る前に是非見て損はしない作品ですね。
ドラマ版のショーランナーのデイモン・リンデロフは、このシリーズで自分が語りたかったことはすべて出来たと言ってますが、今回のシリーズで何シーズンでもいけそうな可能性を証明できたし、東西冷戦や人種差別など原作ウォッチメンの哲学に呼応できる強いテーマを打ち出しさえすれば、優秀なクリエイターが次のショーランナーを引き継いで、また新たなウォッチメンのシリーズが見られると思います。
これで終わらせるのは勿体ないですし、これだけ現実のテーマをリンクさせられるヒーローものはなかなかないですからね。
個人的にはつづいてくれることを切に願います。