狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

カイロレンvsゾンビ?ジャームッシュ流エンタメ映画「デッド・ドント・ダイ」

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映画館が再開しました!
感染者が増えつつあるので、またいつ映画が見れなくなってしまうかわかりませんが、今のうちに見たいものは早めに見た方が良さそうですね。
ジム・ジャームッシュ監督最新作「デッド・ドント・ダイ」
緊急事態宣言が出る前に先行上映した時にあわてて見に行きました。
ジャームッシュゾンビ映画を撮るという話はかなり前から耳にしていたので、アメリカで昨年の夏公開された時、秋頃には日本でも見れると思ってましたが、コロナの影響とはいえまさかアメリカより1年近く遅れるとは、、思いませんでした。
ビル・マーレーアダム・ドライバーティルダ・スウィントンジャームッシュの映画で主役をはった俳優たちがキャスティングされ、イギー・ポップトム・ウェイツ等ミュージシャンも多く出演し、これだけネームバリューのある人が集まったキャスティングはジェームッシュ映画では「ナイト・オン・ザ・プラネット」以来でしょうか。。
しかもゾンビ!ジャームッシュのあの淡々としたストーリーテリングに「わかりやすさNo.1キャラ」のゾンビがどう絡んでくるのか...あまり想像ができませんでした。
ウェス・アンダーソン監督ならすぐに想像つきますけど。。

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ストーリーとしては、アメリカのある平和な田舎町が舞台で、地球の自転する軸がずれてしまい、昼が長く続いたり、逆に夜が早くきたりと、地球が異常な状態になったある日、墓場からゾンビが現われ、次々と住民を襲いはじめ、それに立ち向かっていく警官たちプラス町の住人たちのお話です。
私が見た3月27日の昼の回は、お客さんはほぼジャームッシュのファンや映画好きの方が見に来てた感じでした。
でもこの映画、普通の人が見ても面白い映画なんです!
ジャームッシュなのにちゃんとエンターテイメントってところがびっくりです。
もちろんジャームッシュなのでオフビートな感じですが、過去作で一番一般受けしているであろう「ナイト・オン・ザ・プラネット」よりもっとわかりやすく撮られているんですよね。
ただ前半はいわゆるジャームッシュのテンポ感なので、そこを超えれば普通に楽しい映画です。
予告編が一般層にも響く感じに仕上がっていますが、予告編を見て見にきた人たちでも、ジャームッシュなんて知らなくっても、かなり楽しめる作品になってます。
ぜひ、デートムービーとしてご活用ください。。ってことが言える珍しいジャームッシュ映画です。
予告編にも出てくるので、ネタバレではないのですが、今時の早いゾンビじゃなくて、ゆっくり動く謂わゆる「王道ゾンビ」タイプなので、そこがジャームッシュのシュールな世界観にうまくハマってます。
全然怖くなくてクスって笑っちゃう感じです。
久しぶりにこういうゾンビを見たら「ゾンビ」ナイト・オブ・ザ・リビングデッド等の昔のゾンビ映画が見たくなりますね。
ジョージ・A・ロメロの名前もちゃんと劇中にでてきますし。。
ホラー的要素がほとんどないので、ゾンビ映画が苦手な方でも充分楽しめます。

ただやはりジャームッシュの映画に慣れてる人の方が絶対楽しめる内容になっていますね。
特に前半部分は「いつものやつね」って感じで、そういうジャームッシュ的世界を楽しみながら、後半のエンタメが見られるので、前編を通してダレることはないですね。。ダレては、、いるかな?
最後の方でまさかの展開もあるので「ジャームッシュが○△×出すの?」という意外さで逆に笑えました!

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キャストについては、主演の二人のコンビにつきます、、ビル・マーレー&アダム・ドライバー
スター俳優でありながら、ジャームッシュとの仕事を経験してるだけに、その二つの要素がうまく調和がとれていました。
ブロークン・フラワーズ「パターソン」のように、いつものジャームッシュ映画ならその世界観のみで表現できますが、今回はジャームッシュ的演技でエンタメもこなさなければならないわけで、ジャームッシュに寄りすぎるとシュールすぎるし、エンタメに寄りすぎると世界観をこわしちゃうので、その間をうまくとった絶妙な演技具合となってるところがサスガです。
二人とも演技派ですし、なんだかなんだ知名度的にはゴーストバスターズスターウォーズですからね。。
アダムドライバーは「パターソン」もそうでしたが、ジャームッシュとの相性がバッチリですね。
ガタイが大きくて顔が個性的ってところが、初期のジャームッシュでいうジョン・ルーリー的存在になりそうですし、これからのジャームッシュ作品には欠かせない俳優になりそうですね。
ネットフリックス作品の「マリッジ・ストーリー」での演技も素晴らしかったし「スターウォーズ」も今回のトリロジーアダム・ドライバーオスカー・アイザックでもっているようなものだと個人的に思いますから。。

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またティルダ・スウィントンが謎の剣術使いみたいな役で出演してますが、彼女がもっている中性的な人間ぽくない雰囲気をうまく利用したキャラになっていて、作品の中で飛び道具的扱いになっていますが、彼女のキャラがこの作品の見やすという部分ではかなり貢献していると思います。
意外とトム・ウェイツが結構登場するのですが、ちょっとしたストーリーテラー的な立場にいたのが笑えました。
イギー・ポップのゾンビもなかなか良かったです。いかにもイギー・ポップって感じで。
正直もっとシニカルなものを想像していましたが、思ったより全然おもしろく、明らかにジャームッシュ作品で一番見やすい映画です。
もちろん誰でも楽しめるディズニー的なエンタメ度では全然ないのですが、ジャームッシュ流のエンタメとして、これはこれでありだと思いますし、毎回ではなくてもたまにはこういう趣向の作品も手掛けてくれると嬉しいですね。
でもやっぱりジャームッシュのトーンで描かれてますし、もう40年くらい、こういうトーンで映画作ってるんですよね、この人。
作風に独特の心地良さがあります。

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初期はモノクロ映像が美しかったのですが、決して抜群に面白いとか、人にオススメできるような作風の監督ではないのですが、ジャームッシュ作品に流れるオフビートな感覚は誰も真似できない世界ですよね。
自分も初期の作品は好きだったし、何より音楽がわかってる人ですからね、この人。
スクリーミング・ジェイ・ホーキンスジョン・ルーリーのバンド・ラウンジリザーズを知ったのは、ジャームッシュの映画からでしたしダウン・バイ・ロートム・ウェイツを知っていなければ、名盤「ボーン・マシーン」を聴いていたかもわかりませんので。。
いろんな意味で影響を受けた監督ですが、現在67歳、もう少しだけジャームッシュの作品を堪能したいものです。。
今回はジム・ジャームッシュ監督「デッド・ドント・ダイ」をご紹介しました。

 

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