狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

ニューヨーク1997/80年代のパンクなB級映画を堪能できる作品

緊急事態宣言の最中、5月中旬の日曜日、所用で汐留まで出かけた際、あまりにも閑散とした街の風景に衝撃を受けました。

まるで近未来SF映画そのものの世界。

コロナを機にいよいよ「未来」を現実に体感する時代に突入しつつあります。

やはり未来の景色は希望より絶望に近いようで、先行き不透明な現在、ディストピア映画のような景色に向かいつつある地球に危惧を感じる毎日です。。

そんな一種の極限状態のようなものを描きつづけている映画作家B級映画の帝王・ジョン・カーペンターです。

SFとホラーという二つのジャンル映画でそれぞれ名作を生み出してる映画史に残る監督ですが、 B級感丸出しの映像表現を好んでいるところが、映画マニア心をくすぐりますね。

監督や脚本だけでなく自身の映画の音楽も数多く手掛けていて、 シンセやベース音などに顕著にあらわれるジョン・カーペンター的フレーズもファンにはおなじみです。

ジョン・カーペンター監督の1981年の作品ニューヨーク1997

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ストーリーは近未来、巨大な刑務所と化したマンハッタン島に、大統領専用機が墜落し、 元特殊部隊で終身刑の主人公スネークが、恩赦と引き替えに大統領救出に向かうのだが、 残された時間は24時間しかなかった……という展開です。

まずマンハッタン島をまるごと終身刑の囚人たちの監獄にしてしまうという中二的発想が素晴らしいです!

普通に考えれば、無法地帯になるだけな気もしますが、タクシーが走っていたり、演劇が上演されていたりと、 意外と秩序があって野生化してない社会がちょっと笑えます。。

ゲームに疎い私は知らなかったのですが、メタルギアというゲームのモデルになっているそうで、確かにゲーム的なシチュエーションとストーリー展開の映画です。

この映画のような世界になっていたら最悪なのですが、ディストピア好きの私としては、俯瞰で見れば最高!ってところがたまらないです。

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主演は下衆なキャラクターを演じさせれば世界で五本の指に入るであろう俳優カート・ラッセル

この作品ではまだそれほど下衆ではなく、ランボーの五割程度くらいの強さにもかかわらず、一人で大統領を救出しに行かなければならないという無理ありすぎの設定。

眼帯姿という「いかにも」といった趣のアウトロー的ルックスが最高ですね笑。

ヒーローと犯罪者の思想が同居したキャラクター描写は秀逸で、 観るものに感情移入させるのに説得力十分なキャラクターとなっています。

ジョン・カーペンターの当時の奥さんで、マギー役のエイドリアン・バーボーがセクシーなタフガールという感じで、カッコイイ女性を演じています。

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結果的に一番下衆なキャラクターなのが、救出された大統領だというところに、ジョン・カーペンター節が炸裂しています。

大統領を演じたドナルド・プレザンス「ハロウィン」でお馴染みの俳優ですが、怯える「ただの親父」からラストでは一瞬で下衆キャラに転じるという幅の広い演技は見事と言うしかないです。

サスペンス的要素がふんだんのザ・エンターテイメント映画なのですが、キャラクター同志の微妙な人間関係や政治色・メッセージ性もうまく入れ込んでいて、マニア映画で終わるには勿体ないくらいの隠れた名作だと思います。

予算があればもっと凄い映画になっていた気がしますが、 これくらいの感じがインディ精神あふれるジョン・カーペンターらしくていいですね。

近未来を描きながら、いつの時代にも通じるようなテーマ性が描かれていて、ジョン・カーペンター映画に脈々と流れるパンクスピリットを感じられるB級映画の傑作です。

 

 

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