狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

ナチュラル・ボーン・キラーズ/真面目な男が監督するべきでなかった問題作

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見なければよかったという映画に、ごく稀に出会うことがあります。

オリバー・ストーン監督作品「ナチュラル・ボーン・キラー」。

パルプ・フィクション」の少し後に後悔され、タランティーノの脚本をオリバー・ストーンが監督.....という時点で、もう何も情報などきかずに見に行った記憶がありますが、撃沈。。

映像はポップで超刺激的!

プラトーン」や「JFK」のような政治的堅物作品のイメージがあったオリバー・ストーンのイメージと真逆と言っていいような若さ溢れる映像で、この映像や編集の感覚は好みなのですが、内容があまりにも.....

暴力を描いた作品は「スカーフェイス」をはじめ大好物ジャンルではあるのですが、嫌悪感が凄すぎて、途中から早く終わってこの場を逃げ出したいとさえ思って見ていました...当時は。

それから25年ぶりくらいに今回改めて見てみると、いろんな発見ができました。

主人公のカップル、ミッキーとマロリーは、マロリーの両親を殺害し、その後車で旅をしながら無差別に大量の人を殺していく。

二人はマスコミに注目され世界中の若者たちからも圧倒的に支持される。

ある日ガソリンがなくなったことで立ち寄った先住民の家で、二人は好意的にもてなされるのだが、その晩ミッキーは悪夢にうなされそこで彼は.....という展開です。

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当時はまだ20代でしたので、期待値があったこともあり、主観的にこの作品を見過ぎていたため嫌悪感が凄かった気もします。

そして25年の間に、この作品以上に暴力描写が凄い映画も、凄惨な事件を描いた映画もたくさん見たこともあり、かつ二度目の鑑賞ということで免疫があったためか、、意外と冷静にこの暴力映画を鑑賞できました。

完全に逆説的な映画なので、出てくる映像は刺激的ですが、リアルな視点で語るレベルの映画ではありません。

監督もインタビューで語っているように漫画的な表現で暴力を描いています。

ただオリバー・ストーンという監督の映画作家的性格上から、全力で漫画的世界を描いているため、一般層から嫌悪される作品になってしまった気がします。

この作品はもともとタランティーノが脚本を書き、彼がはじめて監督する予定だった作品だそうです。

ですので、タランティーノのあの映画の撮り方であれば、もっと軽くてシニカルでクールな暴力描写になった気がします、グロテスクさはもっと酷そうですが。。

軽いノリのタランティーノの脚本を真面目で無骨なオリバー・ストーンが書き直した時点で、作品の見せ方がねじ曲り、このような嫌悪感を抱かれる作品になってしまったのではないでしょうか。

個人的にはタランティーノがいつかこの設定を自分の作品でやってほしいですね。

この作品のキーを握る人物で、人気TVキャスターの役でロバート・ダウニー・Jrが出演しています。

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現在の何をやってもスタークキャラのような演技の前の時代の作品で、殺人犯を取材しているうちにいつの間にか殺人の悦楽を感じてしまうという難しいキャラクターをさり気なくこなしています。

さすが子供の頃から俳優なだけあって、彼の圧倒的スキルを感じるキャラクターになってます。

「チャーリー」もこのくらいの時期だったはずですが、アイアンマンでの成功がなければ、彼はもっとバラエティに富んだいろいろなキャラクターを演じていたかと思うとなかなか複雑です。。

もちろん主演の二人あってこそ、このハレンチ映画は成立しているわけで、特にミッキー役のウディ・ハレルソンはあまりにも当たり役すぎたために、彼のキャリアに多大な影響を及ぼしている気がします。

スリー・ビルボード」等でようやく最近、良い人の役も演じていますが、いつ悪人の顔が出てくるのかハラハラしながら見てしまいます。。

当初メル・ギブソンも主役の候補だったらしいですが、彼だと素行不良が公になっている現状、ナチュラル過ぎて本当に殺しそうで怖かったですね。。

当時話題にこそなりましたが、批評家筋からも一般客からもブーイングを受けたこの作品。

名作映画は何かのピースがひとつでも欠けていたら名作に成り得ませんが、この作品はこのピースとこのピースが違ったら、、名作に成り得た映画かもしれませんね。。

 

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