狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

「透明人間」を見る前に見るべき作品その4/見えない恐怖

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7月10日から公開の「透明人間」についてあれこれ調べていたら、70年代の映画で興味深い作品を発見したので見て見ました.....「見えない恐怖」

「ソイレント・グリーン」などを監督したリチャード・フライシャーの1971年の作品で、主演はミア・ファロー

ミア・ファローといえば数ある名作に出演していますが、どうしてもローズマリーの赤ちゃんを真っ先にイメージしてしまいます。

そしてこの作品、ローズマリーミア・ファローに再び出会える映画です。

ミア・ファローといえば、スレンダーで目が大きくて、いかにもホラー映画で餌食になる典型的なルックスですが、彼女の一番の魅力はやっぱり愛らしい声ですね。

永遠の思春期のような甘えん坊な感じで、男なら誰でも守ってあげたくなるような魅力的な少し弱々しい声。

そんなただでさえ、か弱そうな彼女が、この映画では不慮の出来事で目が見えなくなってしまったキャラクターを演じています。

もう、史上最弱といったキャラクターですね。

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ストーリーは.....

叔父の家で生活することになった盲目の主人公サラ。
ある日、彼女が友人のスティーブのもとをたずね後、家に帰ると家族全員が何者かに殺されている。
しかし彼女はその事に全く気がつかず眠りにつく。
翌朝スティーブとの乗馬を終え、風呂に入ろうとした彼女は、叔父が浴槽の中で死んでいることに気づく。
そして家族を殺した犯人は、まだ邸宅の中に潜んでいるのであった。。

という展開です。

この作品、90分にも満たない上映時間にも関わらず、丁寧に伏線をばらまき、怪しい人物も複数登場させ、しかし最後は意外な人物が犯人だったという、親切すぎるくらい親切なミステリー作品になってます。

ヒッチコックのように緻密に計算されているわけではありませんが、まだミステリーやサスペンスといったジャンルが確立されていない時代ということもあり、観客にわかりやすく見てもらうことを最優先にした作りになっています。

特にカメラアングルが秀逸ですね。

最初は主人公サラの行動半径のみを写しているため死体が登場しませんが、少しカメラをひくと一気に死体が出てきてビックリさせる仕掛けになっていて、こういう演出になれてない当時の観客は相当驚いたのではないでしょうか。

またローアングルを多用したり、強風でドアがしまって大きな音が出るなどのサスペンス演出がされていて、古典的ではありますが、あらためて緊張感を高めるのにはこういった演出が効果的であると再発見できます。

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スティーブン・スピルバーグ監督の「激突」と同じく犯人の顔は絶対見せず、星のついたブーツが印象的に何度も映し出されます。

そして何より殺人シーンが一度も出てこないのに、これだけ恐怖感を出しているという点が素晴らしいですね。

現代の映画はホラー以外でもエグいシーンが普通に登場しますが、レイティングが確立されていなかったこともありますが、知恵をしぼって様々な映像表現で恐怖を演出していた時代の方がクリエイティブでカッコ良く感じますね。

ストーリーも最後の最後まで目が離せない作品ですが、主演のミア・ファローも負けず劣らず素晴らしいです。

ローズマリーの赤ちゃん」さながらの恐怖演技で、やはり彼女は追い詰められるキャラが似合いますね。

後半になると半分くらい泣き叫んでるんじゃないかってくらいで、目が見えないのに頑張って逃げ回る彼女を見て、つい「頑張れ!」って応援したくなります。

後年ウディ・アレン作品の常連になりますが、彼女は上手い.....というか人を惹きつける演技をしますね、ホント。

あらためて「ローズマリーの赤ちゃん」が見たくなりました。

「透明人間」の公開がなければ見ていなかったかもしれない作品「見えない恐怖」。

テクノロジーが進化したことによってそれにばかり頼った映画が多い昨今、こういったアイデアのみで成立させる映画を見ると、エンターテイメントはもっと頭を使った表現をしてほしいなぁとしみじみ思います。。

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