悪いやつら/腐敗した社会を生きる最高の外道の物語
チェ・ミンシクとハ・ジョンウ、韓国を代表する二人の名優が、裏社会で生きる男たちの運命を演じた作品「悪いやつら」。
1982年、釜山の税関の検査課主任のイクヒョンは、夜の巡回中に大量の覚せい剤を発見する。
密輸や賄賂が当たり前の税関内で、これまで彼も当然のように不正に手を染めながら家族を養ってきた。
イクヒョンは覚せい剤の日本への密輸を思い付き、同僚の紹介で釜山の裏社会を取り仕切るヒョンベに取り引きを持ち掛けるのだが.....という展開です。
タイトルは悪いやつらですが、ひとりは悪いどころかこれぞ、腐れ外道!
まさに「仁義なき戦い」の金子信雄演じる山守組長が主人公になったような映画です。
そんな最低の男が主人公だけに、観客に共感を得ることなどまず無理!.....のはずが時に笑えるほど情けない表情で、哀れみをこうチェ・ミンシクの演技の愛らしさが凄い!
THEチェ・ミンシク劇場といいたくなるくらい、世界を探しても彼にしかできないようなキャラクターではないでしょうか。
「オールドボーイ」や「悪魔を見た」など残虐な役柄の印象が強い彼が、正反対のヘタレキャラクターにもかかわらず悪者っていう設定をした時点で面白くないわけがない!
「オールドボーイ」でボクシングテクニックを備えているにもかかわらず、あれほどヘタレなファイトシーンを演じるられること自体驚きで、アメリカのコメディ映画のようなケンカの弱さに大爆笑してしまいました。
常に優位に立つ方に身を置く頭のキレとトークスキルは、途中までは痛快なのですが、後半はいつ正義の鉄槌が下されるのかを気にしながら見ていましたが。。
チェ・ミンシクの演技が濃すぎて、もうひとりの主役ヒョンベを演じたハ・ジョンウが割りを食ってる感じがしますが、静かに狂気をはらんだヤクザの演技はクールでなかなか良かったですね。
善悪どちらでも存在感を出せる俳優ですが、この作品では悪だけど、仁義をつらき言っていることもマトモなので、どちらかというとヤクザですが善に近い役の印象を受けました。
それだけチェ・ミンシクの役が破茶滅茶だったというわけですが。。
また検事役で登場するクァク・ドウォンの下衆な演技も良かったです。
「アシュラ」でも突き抜けた下衆の検事を演じてますが、本当にこの俳優さんは不正をする役人が似合いますよね。。
この作品の数年後に、白石和彌監督の「日本で一番悪い奴ら」が公開されますが、この作品と同じようなトーンや雰囲気で作られていた感じがするのですが、どうでしょう。。
韓国映画を見てると韓国には絶対住みたくないなぁ...って思うくらい腐敗した社会が描かれることが多いですが、この作品もご多分に漏れず、韓国という国のズブズブの社会が描かれています。
そんな腐敗した社会をうまく泳ぐ術をもった男の物語であり、ノワールのように撮られていますが、実は俯瞰してみるとコメディにも思えるような作品で、実に韓国映画らしい作品だと思います。
後味は悪いかもしれませんが、超おすすめの作品です。