狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

朝が来る/ただのお涙頂戴ものでない養子の問題を映画的技法で魅せた大傑作

現在の日本を代表する河瀨直美監督の「朝が来る」。

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子供に恵まれなかった清和と佐都子の夫婦は「特別養子縁組」というシステムを知り、そこで生まれたばかりの男の子を養子にする。

6年後、夫婦は朝斗と名付けた息子の成長を見守りながら、幸せな日々を送っていたが、突然、朝斗の産みの親を名乗る女性から、子どもを返してほしいという電話がかかってくる。

恐る恐る夫婦は電話の主を家に招き入れると、子供をあずかった時に見た少女とは全く別人のような風貌の女性であった。。という展開です。

正直、この作品は私の親目線という観点も入ってくるので、他の作品と同列に評価するのがムズカしいですが、ストーリー、演技、撮影、映画的技法、すべての面で高い水準の映画でした。

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とにかく見せ方がうまい!

最初に子供が幼稚園で起こった事件をもとに、子供に対する母親の心中を見せたあとに、子供をあずかる前の夫婦の苦悩を見せ、そして特別養子縁組という世界を紹介し、観衆を映画の前半でもう号泣させてしまうという荒技。

前半を見てる最中に、このあとどういう展開にもっていくのだろうと、泣きながら考えていましたが、むしろこの作品のキモはその後半にあります。

そして、その後半部分の主役である、中学生で子供を産む少女・ひかりを演じた蒔田彩珠さんが素晴らしかったですね。

出てきた時はすごく幼いのに、彼氏君とのラブシーンの「オンナ」の表情や、そのあとの荒んでいく様での顔つき、その荒んだ中にも垣間見える優しさなど、複雑な少女の役を見事に演じきっています。

撮影期間は2ヶ月で、前段階いれても半年しかないのに、この変わりよう。

年齢的に色々なことをすぐ吸収できる期間ということもあるのでしょうが、これからが本当に期待できる女優さんです。

ルックスもちょっと似てますが、橋本愛さんなんかに共通する感じ、しますね。

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夫婦役で出演した永作さんと井浦新さんも、いつも通りの安定感で、河瀬監督の映画だから役になりきるというより、役そのものになるってことによって、いろいろ大変だったようですね。

あと養子縁組機関の主催者である浅見さんを演じた浅田美代子さんもに自然な感じでなじんでいて良かったですね。

浅田さんも年齢を重ねるごとに円熟味が増してきていて、樹木希林さんが演じそうなポジションの役とかもキャスティングされそうですね。

描き方がどちらかに偏ってるわけでもなく、両者のバックグラウンドを描いていて、このへんのストーリーの見せ方が良かったですし、特に海のイメージなんかを使って、ラストに照らし合わせてるところなど、映画でしかできない見せ方で、文句のつけよう全くなしの傑作です。

反面教師的な親が結構出て来るので、子を持つ親としても勉強させてもらいました。。

まだわかりませんが、洋画混ぜても今年ナンバーワン級の作品でした。

キメツが面白いのわかりますが、大人はちゃんとこういう映画も見ておきましょう。。

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