狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

ワンダーウーマン1984/DC映画の新たな方向性を示した作品

2017年の「ワンダーウーマン」の続編、「ワンダーウーマン1984」。

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1984年、最愛のスティーブと死別し孤独に向き合いながら生きるワンダーウーマンこと、ダイアナ。

ある日、そんな彼女の前に、死んだはずのスティーブが現われる。

理由もわからぬまま再開を喜ぶ二人であったが、同じ頃、禁断の力を手にした謎の実業家マックスは、己の欲望を実現すべく、どんどん闇の中に堕ちていくのであった。。という展開です。

今回のワンダーウーマンの一番いいところは、ザックスナイダー臭、、というかクリストファーノーラン臭を全く感じさせなかったところですね。

昨年の「アクアマン」と「シャザム」は、コメディよりの作風ということもあって、少し前までのDC映画に重くのしかかっていたダークナイトの呪いは微塵も感じられなかったのですが、その前に撮られたワンダーウーマンの第1作目は、映画全体に感じるトーンは暗い雰囲気が払拭されてたとはいえなかったと思います。

でも今回の「ワンダーウーマン1984」は、時代設定が80年代という軽い時代だったということも相まって、特に中盤はライトな雰囲気で作品を見せていましたね。

最初と後半がヒーロー映画っぽい展開だっただけに、このライトな中盤のところがすごく効果があって、映画として見やすいリズムを作り、話が展開していく後半にも良い流れを生んで、2時間半という長さを感じさせない原因になった気がします。

前作も結構な長尺だったこともあり、ダレる箇所が所々ありましたが、今回は全くそういう所がなかったです。

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またアクションシーンが少ないわけではないのですが、戦闘シーンが少なかったこともあり、ヒーロー映画独特のマッチョさが薄れていて、よりドラマを重視した作りになっているところが、ヒーロー映画を見慣れない人にも受け入れられる要素だったのではないでしょうか。

もちろん、女性であるパティ・ジェンキンスが監督しているわけですから、自然と女性の視点になっているのは当然なのですが、より意識的に女性の観点で見た世界観となっていた気がします。

コミックの映画なので、もちろん現実離れしてたり、辻褄があわないところはいっぱいあるのですが、冒頭の少女時代も含めて「ずるをしてはいけない」というテーマが作品全体に流れていました。

レイティングがかかってないので、子供と一緒に見に行ける作品ですが、子供たちが楽をして得た力は無意味だということを潜在意識にうえつけてほしいものです。

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また、タイトルからイメージして、80年代っぽさをガンガン打ち出している作品なのかなぁと思ってましたが、当時の米ソ冷戦構造という状況を利用しただけで、それほどポップに80年代を表現してはいませんでした。

確かに、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの音楽に、ハイレグレオタードに大きめのメガネなどのあの頃の懐かしくちょっとイタい感じの80年代ファッションがエッセンス的には出てきます。

でも見た目の80年代感というより、この作品の話の展開も含めた圧倒的なエンターテイメント性、ファミリームービー感という部分が、一番80年代を感じさせてくれました。

そこにヴィラン側の背景をじっくり描くという近年のヒーロー映画のテイストも加わり、スマートすぎるくらい完璧なヒーロー映画を誕生させた感があります。

ただその部分で、大人サイドから見るとあとが残らない分、記憶に薄い作品にもなりそうですが。。

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キャスト的にはクリス・パインは役柄的に今回はちょっとさえない感じでしたね。。

ガル・ガドット演じるワンダーウーマンがひとまわり魅力的なキャラクターになっていますが、彼女そのもの演者としての成長、そして大人の女性としての成長がワンダーウーマンのキャラクターにもそのまま反映されていたような気がします。

私は彼女の出演作はワイルドスピードシリーズとワンダーウーマンまわりしか見ていないので、彼女の印象はアクションよりのイメージしかなく、美人だからということもあるのですが、あまり彼女の演じるキャラクターの内面が見えてこなかったんですね。

見た目は抜群にカッコいいんだけど、そこまで感情移入できるキャラクターには感じませんでした。

この点は、アベンジャーズシリーズでのブラックウィドウにも同じような感じを抱いていましたが、エンドゲームでのアフターサノスの世界での奮闘を経て、ブラックウィドウの印象がガラッと変わりました。

今回のワンダーウーマンも後半の力を失っていくところなど、随所で弱さがでてくる場面がありますし、前作と違い成熟した大人の女性として描かれているところに、より魅力を感じました。

以前はワンダーウーマンのコスチュームをしていないガル・ガドットにはあまり魅力を感じてませんでしたが、この作品ですっかり、彼女のファンになってしまいました。。

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そして私的に今作最大の見所は、ペドロ・パスカル演じるマックスでした。

ペドロ・パスカルは現在、ディズニープラスで配信中の「マンダロリアン」で主役のマンドーを演じていますが、彼の演技によって今回のヴィランであるマックスはすごく共感できるキャラクターだったと思います。

不遇な少年時代を経て、一攫千金を夢見て石油会社をたちあげ、CMで有名人になるものの経営は破綻していて、まさに崖っぷちのところであの石に出会うのですが、全てを手に入れながらも人間的に落ちるところまで落ちてしまってからの....ラストの展開はやられました。

半分、子役のおかげでもあるのですが。。

もともと「ゲーム・オブ・スローンズ」などで悪役っぽいイメージがついてる俳優ですが、「マンダロリアン」でも仮面をつけているにもかかわらず感情が見えるくらいの演技ができる人ですし、今回のヴィランのキャラクターはペドロ・パスカルにはうってつけでしたし、彼が演じたことで、よりこのヴィランに深みが出て、作品自体を魅力的にした要因のひとつになっていました。

いろんな映画での可能性を秘めた俳優ですし、今後の活躍が楽しみですね。

個人的にはマフィア系の映画にどんどん出てほしいですし、ルカ・グァダニーノが監督することでおちついた「スカーフェイス」のリメイク版に、トニーモンタナ...は無理でも何かの役で出てほしいですね。

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2020年のDC作品はコロナの影響もあり「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」と「ワンダーウーマン1984」の2作のみでしたが、どちらも女性を主人公にした映画で監督も女性ということで、DC映画にとってはかなりレアな年になりましたが、これを機にDCがマーベルを気にせずに、DCはDC独自の路線を突っ走ってもらいたいです。

2年続けて良い感触の作品が続いたので、次に予定されているリブート版のスーサイドスクワッドが勝負になるでしょうね。

ジェームズ・ガンが一時的にマーベルを解雇されたおかげで監督をつとめることになった「ザ・スーサイド・スクワッド」ですが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のような路線になるのか?はたまた別の感じになるのか?今から楽しみでなりません。。

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