狂った朝日 と 汚れた血/映画部

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【テネット公開記念】プレステージ/嫉妬と怨念によって展開されるドロドロ人間模様の傑作

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9月に3年ぶりの新作「TENET」が公開されるクリストファー・ノーラン

ノーランの作品といえばやはり「ダークナイト」がイメージされますが、その1本前に撮った作品で、ヒース・レジャーの歴史的怪演を引いてしまえば明らかに「ダークナイト」より映画の出来としていえば格上の作品である2006年の「プレステージ」。

久しぶりに鑑賞しましたが、やはり素晴らしい作品ですね。

最近は主人公が下衆な人間だったり、後味の悪いラストの映画がもてはやされるような時代ですが、そういった意味で「10年早すぎた」作品ともいえるのではないでしょうか?

実際私もこの作品をレンタルではじめて見た2008年くらいと今とでは、今、見ると時代的にしっくりくる部分も多いです。

また何度でも見たくなるといった意味でもサブスク時代の現代にマッチした作品なのではないでしょうか。

 

19世紀末のロンドン。

アンジャーとボーデンのふたりの若者は、あるマジシャンのもとで修行をしていた。

ある日、師匠の助手であったアンジャーの妻が水中脱出マジックに失敗し溺死する。

その原因はボーデンが結んだロープであったが、ボーデンはそれを自覚していなく、アンジャーは怒り狂いボーデンと袂を別つ。

その後、ふたりは互いのマジックショーに客に変装してショーを妨害することを繰り返しながら、激しく競い合うようになる。

ある日、ボーデンが瞬間移動のマジックで一躍有名になり、そのタネを見破ろうとアンジャーは深い仲になっていた助手のオリヴィアをボーデンのもとに送るのだが.....といった展開です。

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マジックが題材となっていて、ノーランの作品群の中では明らかに地味な映画で、ノーランが好きじゃないとなかなか見られていない作品ですが、私はそこまでノーランが好きではないのにツボにはまった作品ですね。

なにしろ主人公二人がマジックに身を捧げているとはいえ、どちらも下衆野郎!

どうしようもない下衆野郎ボーデンを演じるのはクリスチャン・ベール、同情の余地のある下衆野郎アンジャーを演じるのはヒュー・ジャックマンとキャスティングが絶妙です。

ヒュー・ジャックマンウルヴァリンのままの肉体でマジシャン?というのが少し気になりますが、彼がもってる影のあるヒーローオーラがうまくアンジャーというキャラクターに馴染んでいますね。

やってることはボーデンと大差ないのに、アンジャー視点で語られているという理由のみで、あまり下衆に見られないといったところもヒュー・ジャックマンのキャラクターによるところが大きい気がします。

でも個人的にはクリスチャン・ベール演じるボーデンの方に魅了されてしまいます。

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クリスチャン・ベールの何を考えてるのかわからない不気味なクールさにうまくフィットしたキャラクターで、ひとりの人間とは思えない二面性を持つ(?)キャラクターをあやしく演じています。

バイス」といい「フォードvsフェラーリ」といい、演技的に今まさに絶頂期を迎えている俳優ですが、彼の得意な狂気をはらんだ演技がバットマンシリーズではイマイチ活用しきれてないところが残念ですね。

歴代のバットマン俳優も、バットマン以外では凄い演技の人が多いので、やはりヒーローを演じるのはなかなか役者としては損な役割ですね。。

とにかく、この作品は一度見て、ラストでの大どんでん返しに驚いて、もう一度見直して「あ、そういうことなんだ!」ってことがわかる作品なので、分かりづらいとか、難解なイメージを持たれるのは仕方ないでしょうか。

しかし、時系列を少し操作しているだけで、話の中核はわりと単純で、二人(?)の男の嫉妬と怨念によって動いていく展開ですので、サスペンス映画が好きな方やドロドロした人間模様の話が好きな方にはハマる作品ではないでしょうか。

後半のSF的展開などお約束的なノーランらしさも全開で、私のように19世紀以前の西洋ものが得意でない方にもすんなり入り込める内容となっています。

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ただノーランの作品全体に言えることですが、女性の扱いがこの作品でも結構ぞんざいな扱いですね。。

二人のマジシャンを描いた映画で、マジックの成り立つ3つのパートである「確認」「展開」「偉業」がうまく映画全体の構成にも活用されていて、彼のフィルモグラフィーの中でも物語が一番うまく描かれている印象です。

インターステラー」くらいから、完全に巨匠扱いになっているノーラン監督ですが、「プレステージ」は彼の凄みが最初に発揮された作品と言っても良いでしょう。

地味に見られがちですが、ノーランの作品の中でも重要な一本であることに間違いはありませんので「TENET」を見る前に是非抑えておきたい作品です。

 

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