殺人者/マ・ドンソク主演の血塗られた小さな恋のメロディ
私が見たマ・ドンソクの映画の中で、彼が最も暗いキャラクターを演じている作品.....「殺人者」。
母のいないヨンホは、田舎で犬飼いの父と二人で暮らしていた。
ある日、ソウルからきた転校生の少女と仲良くなるが、少女が酔った母親とともにヨンホの父親に送ってもらった次の日から、彼女の態度が一変する。
彼女から父親に聞いてと言われたヨンホは、ある夜、父のあとを追うとそこで見たものは.....という展開です。
マ・ドンソクが主演の映画ではありますが、物語としては彼の子供役のヨンホと少女ジスの目線で語られている作品です。
二人とも不幸な家庭環境ということもあり、いつの間にか惹かれ合う彼らの青春恋愛模様が描かれる前半から一転、血塗られた家系の話になる展開は少し急ぎすぎてる感じもしました。
多分予算がなかったからだと思いますが、上映時間も75分ということもあり、もう少しキャラクター描写を深く描いていれば、かなり傑作韓国ノワールになったのではないでしょうか。
しかし短い時間ながら、ドラマ部分は面白かったですし、ラストは日本の映画ならひとつ前の段階で想像させながら終わらせる結末にするところを、さすが韓国、キッチリすっきり終わらせてくれます。
今の姿からは想像もつかないくらい暗いキャラクターを演じているマ・ドンソクですが、やはり彼はしっかりした演技スキルを身につけている人だとあらためて感じました。
言葉の少ないキャラクターながら、その凶暴性はひしひしと感じますし、時折見せる狂気の表情は、、、マジ怖いです!
今でもよく見せる困った顔の時の目を、さらに闇の奥に落とし込んだような、どう見ても殺人犯にしか見えない目が凄いです。
やはり連続殺人犯はゲッソリした表情が似合いますので、体格的にもう今のマ・ドンソクでは.....無理でしょうね、こういった役は。
「罠〜Deep Trap〜」は表の顔と裏の顔が違っていましたが、この「殺人者」では、ある意味地続きになっていて、そこが「罠」よりもっと凶悪な匂いがする男になっています。
彼の息子と転校生の少女を演じた二人も、初々しい演技で好感もてますし、息子役の子の堕ちていく感じが、何となくキム・ギドク風の演出で怖かったです。。
結果、担任の先生の何気ない一言がそれぞれの運命に影響を及ぼすのですが、口は災いのもとというか、子供と接する時は軽くものを言ってはいけないということが教訓となりました。
映画をたくさん見ていくと、子供の育て方って大変だなぁとしみじみ思う今日この頃です。。