【テネット公開記念】メメント/クリストファー・ノーランを一夜にして成功に導いた画期的作品
クリストファー・ノーランという新しい才能が発掘された作品「メメント」。
主人公レナードは記憶が10分間しか保てない前向性健忘の男で、ポラロイドで人物の写真を撮り、大切なメッセージを残すため常にメモをとり、時には身体に刺青を入れメッセージを残していた。
そんな不自由な状態の彼だが、過去に妻を強姦し殺害した犯人を探し追い求めるのだが、彼の記憶のあいまいさを利用する人物たちの妨害にあい、なかなか捜査が進まない。
果たして彼は妻を殺害した犯人を探し出すことができるのだろうか.....という展開が時系列的に遡って語られるという画期的な作品です。
アメリカでは封切り時はわずか11館だった上映館が500以上に拡大し、アカデミー賞でも脚本賞や編集賞にノミネートされるなど、興行的にも批評的にも評価されています。
日本でも公開前から映画好きだけでなく、音楽好きやファッション系などサブカル全般に話題を集めた作品で、私もこの公開前の熱気をすごく記憶しています。
一度見ただけでは、作品の全貌を把握できないという、クリストファー・ノーランという強い作家性をもった監督の登場に歓喜しました.....この作品の時点では。。
10分しか記憶がもたず、しかも時系列的にはどんどん前に遡っていくという展開に、どのようなラストが待っているのか期待と不安が交差していましたが、ある意味強引ながら、きちんと話を完結させることが凄いです。
監督の弟で、後にノーラン作品の脚本として欠かせない存在となるジョナサン・ノーランが書いた短編を元に、ストーリーを構成していったらしいのですが、そのアイデアもさることながら、これほど時系列を巧みに操った映画は記憶にないくらいの画期的な作品となっています。
長編処女作の「フォロウィング」を発展させたような部分も随所に見受けられますが、「フォロウィング」は片手間のような状態で仕上げた作品でしたので、才能ある人が完全に映画製作に没頭できると、これほど飛躍的に作品の質が向上するのだなということを感じさせてくれます。
しかも次作「インソムニア」や「バットマン・ビギンズ」のような制約からくる窮屈さは微塵も感じられず、予算的な制約があるとはいえ、クリエイティブ的には出せる力が存分に出たといえるくらい、ノーランワールドに浸れる作品となっています。
何せエンドロールではクリエイティブの象徴的アーティストであるデヴィッド・ボウイの曲が使われていますから。。
この後「インセプション」や「インターステラー」でも新しい映画的なアイデアが登場しますが、衝撃度だけでいえば今だにこの「メメント」が一番な気がします。
ビデオがレンタルされた時、時系列的に並べて見たかったので、作品終わりから順に見ていったのですが、やはり整合性をあわせるだけの作業でしかなかったです。
時間が遡るのに映画的なダイナミズムを出すというとてつもないことをやってのけている作品で、個人的に衝撃度的に限って言えば、今まで見てきた作品の中でもトップ3には入るような作品ですね。
最新作「テネット」でも時間を使ったストーリー展開となっているようですし、「時間」というのはノーラン監督の代名詞ともなっていますね。
デビュー作から使われた時系列捜査ですが、この「メメント」はノーラン監督的にも、そして映画史的にも、最もトリッキーな「時間」の使い方をした作品といってもいいでしょう。。
【テネット公開記念】フォロウィング/ノーラン監督の才能の片鱗を見せつけた制作費6000ドルの処女作
TENETの公開が町同士いクリストファーノーラン監督の長編処女作「フォロウィング」。
作家志望のビルは、アイデア探しと退屈しのぎから、誰彼かまわず尾行をすることが習慣になっていた。
ある日、コッブという男に尾行を気づかれしまう。
コップは泥棒を生業としていて、彼とともに他人の家に盗みに入ったビルは、そのスリリングさに興味を抱きやみつきになっていく。
そして盗みに入った家にあった証明写真の女性が気になったビルは、彼女を尾行し、バーで彼女に声をかけるのだが.....という展開です。
ストーリーにするのも一苦労しましたが、何せこの作品、時系列がパズルのようにバラバラになっていて、一度見ただけでは完全に話を把握できないような仕組みになっています。
「メメント」は逆算方式という時系列操作が画期的な作品でしたが、この作品はいたずらに時系列がバラバラにされているため、主人公の身なりや傷などを追いながら、観客が頭の中で時系列をあわせていくという、信じられないくらい性格の悪い作りになっています。
ただ何回か見ると、このバラバラの時系列もかなり計算されたものであることに気づきますので、ハマる人なら中毒になってしまう構造の作品ではないでしょうか、私は二回で飽きましたが。。
とにかく「絵」が圧倒的にかっこいいんですね。
ノワールタッチの白黒映画で、金がなくてもかっこいい映像は撮れるというお手本のようになっています。
ファムファタール的な女性キャラも登場するところもノワールっぽいですし、単純なストーリーでも様々な映像技法を用いる事で、魅力的な作品が作れるということを証明していますね。
ただノーラン監督の最大の欠点でもあるアクションシーンをうまく撮れないということが、この作品でも露呈されています。
これだけ非CGにこだわっているにも関わらず、アクションが苦手というのも不思議な感じですね。。
また役者さんの演技が微妙という理由もありますが、魅力のあるキャラクターが全く登場しないという点も痛いですね。
ただ要所要所で挿入されるインダストリアルな音楽が良いアクセントになっていて、白黒の映像と良い意味でアンバランスになっていてカッコいいです。
映像と音楽のカッコよさ、そして時系列操作を含めた編集のキレで、キャラクターの微妙さをカバーした、若きノーランの才能と努力が結実した作品です。
正直、それほど面白くなかったですが、70分という短い尺の中で、クリストファー・ノーランという映画作家の特徴が半分くらいは現れている作品で、ノーラン監督の原点を確認するという意味ではなかなか興味深い映画です。
【テネット公開記念】ダークナイト・トリロジーをふりかえる
9月に新作「テネット」の公開が控えているクリストファーノーラン。
彼がつくった バットマン三部作は「ダークナイト・トリロジー」と称され、特に第二作の「ダークナイト」は映画史においても重要なマスターピースとなっています。
クリストファーノーランといえば「インターステラー」という方もいると思いますが、 やはり彼の一番の代表作といえば「ダークナイト」と言えるでしょう。
「メメント」で注目浴び、そこで新しいバットマンシリーズを企画していたワーナーに声をかけられてスタートしたのがノーラン版のバットマン。
あらためて見直して色々と思うことがありましたので、8つのポイントでまとめてみました。
- ダークナイト・トリロジーの鑑賞の仕方
- クリストファー・ノーランが創り上げたシリアスな作品世界
- 歴史的怪演!ヒース・レジャーのつくりあげたジョーカー
- アメコミ映画の「格」を一気にあげた「ダークナイト」
- バットマン役クリスチャン・ベールの無駄遣い
- リブートの難しさが露骨に出た第一作
- 前作の凄さに押しつぶされた第三作
- 結局ノーランにバットマンはあわなかったのではないか?
ダークナイト・トリロジーの鑑賞の仕方
最初にふれておきますが「ダークナイト」はこの三部作の中では「別物」です。
これに異論がある方はほとんどいないと思いますが、「ダークナイト」は
★ジョーカーをヒース・レジャーが演じたこと
★シリアスな作品の雰囲気にそのキャラクターがハマったこと
★公開前にヒース・レジャーが亡くなって話題になったこと
などなど.....色々な奇跡が積み重なった作品ですので、コミック映画の中でも別格すぎで、「ダークナイト」はシリーズを通して見るのではなく、単品で見るべき作品です。
残りの「バットマン・ビギンズ」と「ダークナイト・ライジング」、これらについては必ずセットで見た方が良いでしょう。
「ダークナイト」はとばして「バットマン・ビギンズ」の次に「ダークナイト・ライジング」を見ると、前編・後編という見方ができて、コミック映画として納得できます。
公開順通りに「ダークナイト」の後に「ダークナイト・ライジング」を見ると、荒さが目立ち、それがノイズになって話に集中できないですので、1と3をセットで見ることをおすすめします。
公開時は私も「ダークナイト」のイメージがあったので「ダークナイト・ライジング」も期待して見に行きましたが、、、、、という感じでしたね。
でもこれは仕方ないです!
何故なら「ダークナイト・ライジング」にはヒース・レジャーが演じたジョーカーが出ていないですから。。
決して嫌いな映画というわけではないのですが、比較対象に「ダークナイト」をもってくると映画としての「格」が数段落ちるのは仕方ありません。
そもそも「ダークナイト・ライジング」は「ダークナイト」より「バットマン・ビギンズ」との関連性の方が深いので、 頭に「ダークナイト〜」とつけるより、「バットマン〜」とつけた方が良かった気がしますね。
どちらにしても二作目が偉大すぎるため、ダークナイト・トリロジーと呼ばれたと思いますが。。
クリストファー・ノーランが創り上げたシリアスな作品世界
クリストファー・ノーランがコミック映画全体にもたらしたある意味最高で、ある意味最悪な革命といえば、作品の描き方をシリアスなトーンにしたことです。
「バットマン・ビギンズ」の頃からこの手法で撮られていましたが、それが顕著になるのが「ダークナイト」です。
しかしこれはヒース・レジャーの文字どうり命がけの怪演のおかげで成立したと言ってもいい作品で、次作の「ダークナイト・ライジング」は重くて暗くて、やたら大げさな感じの映画になってましたね。
2019年公開のトッド・フィリップス監督の「JOKER」を見た時は、ホアキン・フェニックスの怪演もすごいのですが、 作品全体に漂う危うさにホアキン・ジョーカーの凄みがプラスされて特別な作品になったと思います。
しかし「ダークナイト」の場合は、ヒース・レジャーのジョーカーに作品が完全に引っ張られてるんですよね。。
ヒース・ジョーカーが出ていない場面でも、常に彼の影を感じながら話が進行してますし、 主役は誰かと言われたら明らかに「ジョーカー」でしたから。。
よって、シリアス・トーンでの語り口は成功したかと言われると、かなり疑問符がつきます。
この後の「マン・オブ・スティール」以降のDC作品が一時期低迷した原因は、明らかに「ダークナイト」的世界観をひきずったせいですし、暗いスーパーマンを見て誰がうれしいんだ!.....っていう話ですよね。
逆に「ウィンター・ソルジャー」くらいから、MCU作品がシリアスさをうまく取り入れて人気を不動のものにしましたが、やはりマーベルはサジ加減を調整するのが絶妙です。
DCは「アクアマン」以降明るい映画路線に切り替えて成功してますので、しばらくはこの路線でいってもらいたいですね。
歴史的怪演!ヒース・レジャーのつくりあげたジョーカー
「ダークナイト」とか「バットマン」とかよくわからないっていう人でも、「ダークナイト」のジョーカーを見て何も感じないっていう人はほとんどいないでしょう。
それほどヒース・レジャーの演じたジョーカーが映画史に残る怪演であることに異論はないでしょうし、「JOKER」でホアキン・フェニックスが演じたジョーカーも、絶対このヒース・ジョーカーを意識していたことに間違いはないでしょうから。。
この役を演じるにあたり、ヒースは精神病院に入っていた男の心になりきろうと思い、6週間汚いモーテルにひきこもり、ジョーカーという人物になりきろうとしたそうです。
そこで創りあげたジョーカーのキャラクター設定が
★口尻をナイフで切った裂け目にしたこと
★ジョーカー自らがしていると思わせる印象的なあの下手くそメイク
★独特な喋り方
.....などを創りあげたそうです。
この特徴は、私たちが夢中になっているジョーカーのイメージと重なりますね。
これだけキャラクター設定から関わっているということは、「ダークナイト」自体がジョーカーによって特別な映画になっていることを考えると、ヒース・レジャーが「ダークナイト」という作品を歴史的映画に導いたといっても過言ではない気がします。
それがジョーカーの登場しないビギンズとライジングのイマイチ感にあらわれてもいますが。。
ヒースが命がけでつくりあげたジョーカーは、映画史における悪役キャラクターの中で燦然と輝く存在ですし、 ジョーカーを演じることが俳優にとってキャリアを脅かしかねない存在にしてしまったくらい凄いものですからね。
ジョーカーという存在になる前の物語とはいえ、同じような次元で演じたホアキンは、やはり怪物です。
アメコミ映画の「格」を一気にあげた「ダークナイト」
半分以上ヒースのおかげということを差し引いても、やはり「ダークナイト」はすごい映画で、 アメコミ映画とかヒーロー映画でこれほど政治的なテーマや哲学的思想を入れ込んでいるという部分で衝撃を受けました。
まさかバットマンを見に行って、倫理観を問われるとは思ってませんでしたから。。
この作品を見て、映画好きの人もヒーロー映画をチェックするようになった人は多いのではないでしょうか。
ティム・バートンのバットマンや、サム・ライミのスパイダーマンのように、デートムービーとして気軽に見に行くものだと思っていたアメコミ映画が、ひとりでも見に行きたくなるような映画にランクアップさせた感じがします。
空前の大ヒットとなったアメリカで、この作品がアカデミー作品賞にノミネートされなかったことが大ブーイングとなったことで、アカデミー賞のノミネート作品が5作品から10作品以下に変わったというのも有名な話ですよね。
文字通り歴史を動かした作品としても語り継がれることになったのです。。
バットマン役クリスチャン・ベールの無駄遣い
このシリーズでバットマンを演じたのが、今をときめくクリスチャン・ベールです。
ヒース・レジャーに全然劣らないほど素晴らしい俳優ですが、このダークナイト・トリロジーでは全然印象ないですね。
ノーラン監督の前作にあたる「プレステージ」を見た時、クリスチャン・ベールの演者としての才能に驚き、その後も「アメリカンハッスル」や「バイス」などで印象深いキャラクターを演じ、今年公開の「フォードvsフェラーリ」を見たら完全に「俺たちのクリスチャンベール!」になっていましたから。。
そんな素晴らしい俳優がダークナイト・トリロジーでは全くダメなんですよね。。
ただ、そもそもバットマン=ブルース・ウェインは性格的にも主人公ぽくないので、描き方がどうしても地味になりがちですので仕方ないのでしょうか。
90年代のバットマン・シリーズでバットマンを演じた、マイケル・キートンやジョージ・クルーニー等のちに凄い俳優になる人たちも、バットマンではあまりインパクトを残せてないので、バットマンというキャラクター自体が損な役なのかもしれないですね。
ひきこもりの大金持ちですし、立場的に誰も共感できないキャラクターだから仕方ないのでしょうか。。
リブートの難しさが露骨に出た第一作
このダークナイト・トリロジーで、明らかにほかの二作より出来が悪い「バットマン・ビギンズ」。
この作品をバットマンに何の興味もない人がネットフリックスなどで見たら、途中で見るのやめてしまうレベルですね。
正直、前半の影の同盟の部分、つまらないです。。
バットマン初心者に興味を持ってもらおうという配慮が全然ない気がします。
渡辺謙さんが無駄使いされてますし。。
ゴッサムシティに戻ってからは、少しはエンタメ度があがって見られる作品になってますが、やはり全体的に地味なんですよね。
最大の敵がリーアム・ニーソンというところがまず渋すぎですし、ルトガー・ハウアーも全然使いきれていないし、 悪者で存在感があったのはキリアン・マーフィーくらいでしょうか。
マイケル・ケインやモーガン・フリーマンも「ダークナイト」の方がより魅力的ですし、そもそも最初の二作で鍵となるキャラクターのレイチェルとの関係がイマイチぼんやりした描かれ方なのが腑に落ちないんですね。
ヒーロー映画としての派手さが全然なく、ただのB級アクション映画という感じですし、 正直、ストーリーをあまり覚えていなかったくらい印象の薄い作品です。
「ダークナイト・ライジング」で調整したことによって、何とか存在価値が出た一作という感じで、 この記事をかいていなければ二度と見ていなかったかもしれない作品でした。
前作の凄さに押しつぶされた第三作
一作目はかなりディスりましたが、この「ダークナイト・ライジング」に関しては、そこまで不満はありません。
それは何かといったら、ふたりの女優さんのおかげです。
まずは、アン・ハサウェイ演じるキャットウーマンがカッコ良かった!
顔的には猫っていうより犬っぽい顔ですけど。。
今までのキャットウーマンは、やたら色気で誘惑する峰不二子的キャラクターでしたが、このキャットウーマンはあっさりしていて悪党加減もほどよく、 最終的に一緒に戦うのも流れ的に無理な感じがしなかったです。
アン・ハサウェイの特別ファンというわけでない私も、このキャットウーマンのスタイルや立ち姿には魅了されました。
もう少し出番を増やしてほしいくらいでしたが、正直、あの「穴蔵」のシーンはもっと削って、 キャットウーマンを見せてほしかったですね。
もう一人の女優、マリオン・コティヤール演じるミランダも素晴らしかったです。
ネタバレしますのであまり言えませんが、彼女の役まわりは美味しかったですし、 オスカー女優さんなので、あの切り替わる場面などうまかったですね。
そんな二人の女優の活躍をもってしても、イマイチぐだぐだ感が否めないのは、すべてあの「穴蔵」でのシーンだと思います。
あれがなければストーリーが展開しないのでしょうが、ちょっと長く感じましたね。
「バットマン・ビギンズ」の影の同盟の部分もそうでしたが、長く感じるというのは、 そのシーンがおもしろく描かれてないからなのですよね。
最後の警察vs犯罪者軍団のシーンも、人が多いだけで迫力不足でどうでもいいし、 音楽だけ盛り上がっていて、どうして悪者なのに正々堂々殴りあうのかなど、いろんな疑問も浮かびイマイチのれませんでした。
メインのヴィランであるベインの描き方もイマイチでしたし何より、、長いですよね。
「エンドゲーム」の3時間は長く感じませんでしたが、この映画の165分、長かったですね。。
結局ノーランにバットマンはあわなかったのではないか?
「ダークナイト」が傑作になったのは、ヒース・レジャーの怪演というのがすごく比重をしめていて、 そう考えるとクリストファー・ノーランがバットマンに及ぼしたものって、ただただ暗いってことだけな気がしますね。
たとえば「ダークナイト・ライジング」なんて、ロビンのキャラクターがああいう感じでなく、 もっとブラックなユーモアの要素を入れた方が、エンタメ度が高くなって、 おもしろいアクション映画になっていた気がしますし、「バットマン・ビギンズ」は.....あれはどうしようもないですね。
その後プロデュースで関わった「マン・オブ・スティール」への影響などを考えたら、 絶対「負」の要素の方が大きかった気がします。
やはりノーランは、弟と一緒に作ったオリジナル脚本の方が、映画として全然おもしろいですし、 ダークナイト・トリロジーをのぞけば、わりと好きな監督の部類に入りますから.....「インソムニア」は除きますが。
昨年「JOKER」を見た時、アメコミ映画って概念があの映画からは1ミリも感じませんでしたが、 見終わってすぐに「ダークナイト」を見てみたら、思いっきりアメコミ映画って感じでしたし、 やはりそういう娯楽映画としての制限のある状態で撮った作品ですので、 ノーラン監督の良さが50%くらいしか生かされなかった気がします。
結果クリストファー・ノーランは「ダークナイト」によって巨匠への道が開けましたが、ノーラン監督なら遅かれ早かれそうなっていたと思うし、 バットマンに関わらなくても良かった気がしますね。。
コロナの影響で予定が変更するかもしれませんが、2021年公開予定の「ザ・バットマン」は、 「クローバーフィールド」やリブート版の「猿の惑星」のマット・リーヴスが監督ということで、 一定のクオリティは保証できるのではないでしょうか。
予告編を見るとワクワクしますが、あまり期待しすぎず、フラットな気持ちで見に行きたいと思っています、今のところ。。
マ・ドンソク/キャラクタートップ10
韓国、そしてアジアを代表する俳優・マ・ドンソク。
彼がこれまで出演してきた映画の中で演じてきたキャラクターを、 個人的好みで勝手にランキングしてみました。
2016年の「新感染/ファイナルエクスプレス」でブレイクしてから、 続々とマ・ドンソク主演の映画がつくられていますが、実はかなり紆余曲折のある人生を歩んできているマ・ドンソク。
18歳でアメリカにわたり、大学を経て、フィットネストレーナーやボディビルダーとして活動しますが、 トレーナーを務めた中にケビン・ランデルマンやマーク・コールマンといった名前も。
格闘好きなら誰でも知っている選手ですが、そんなファイターのトレーナーをやる時点で単純に凄いと思うんですが。。
本格的に俳優として活動するのが2002年からで、30歳過ぎてこれまでのキャリアを捨てて俳優として一からスタートする決断をしたことが凄いですね。
普通なら夢をあきらめるくらいの年齢ですから。。
それから十数年で「新感染」でブレイクしたことを考えると、 意外に俳優として成功したのは早いのかな?とも思いますし、運ももっている人ではあるでしょうね。
来年にはマーベル映画の「ジ・エターナルズ」が控えていて、その後ハリウッドリメイク版の「悪人伝」で 彼の憧れの俳優であるシルヴェスター・スタローンとも共演しますし、 今、世界でもっとも注目を浴びる俳優のひとりだということは間違いないですね。
そんなマ・ドンソクの出演映画のトップテン.....ではなく、あくまでキャラクターでランキングしてみました。
ブレイクして短期間で出演しまくっていることもあり、 作品のクオリティに差があるということも理由ですね。。
映画そのものの格付けでランキングするより、 キャラクターに目を向けたランキングをした方がマ・ドンソクっぽくて面白いと思ってつくってみました。
10位/「スタートアップ!」の料理人コソク
この秋公開ですのでまだ予告しか見てないのですが、コメディに特化したキャラクターとしてはこれまでで最強じゃないでしょうか?
この手の映画は予告につられて見に行くとがっかりすることもあるのですが、期待値もこめて10位にしました。
公開後に「え?」と思わないようにおもしろい映画であってほしいです。
9位/「ザ・ソウルメイト」の柔道館館長ジャンス
作品としては少し残念な映画で、悪者も弱ければ、マ・ドンソクも全然強くなく.....というかアクション映画ではないのですが。。
名作「ゴースト」をベースにした感じの作品で、マ・ドンソクはウーピー・ゴールドバーグ的な役なのかな??
子供と触れ合うシーンで見せる和み系のマブリー演技がいいんですよね。
娘とのやりとりがパパオーラ全開でほっこりします。
たしかお子さんはまだいなかったと思いますが、 きっといいお父さんになるんだろうなーって感じでそのシーンに注目してください。
8位/「殺されたミンジュ」の謎の組織のリーダー
キム・ギドク監督の映画を見なれてない人には「何これ?」って感じの映画ですが、 キム・ギドク作品を見なれた私でも「何これ?」って作品です!
ただマ・ドンソクが演じた謎の組織のリーダーは、自分の正義を貫き、盲目的に罪人たちをこらしめる一方で、 深い悲しみというか虚無感さえ感じる役で、すごく印象に残ります。
登場する半分は暴力をふるっている役ですが、俳優としてのマ・ドンソクの凄みが出ていて、 彼のキャラクターだけで作品がなんとか成立しているといっても過言ではないくらいの映画です。
イ・チャンドンやパク・チャヌクのような韓国を代表する映画監督の作品にはまだ出演してない彼ですが、 異端とはいえ巨匠のひとりであるキム・ギドクとの仕事で見せた俳優魂が印象的でした。
7位/「守護教師」の体育教師ギチョル
ボクシングの元チャンピオンという設定で、暴れまくるのかな.....と思っていたら、 期待したほどアクションシーンはなかったです。
町ぐるみで腐敗しきっている地域の学校に、マブリー演じる体育教師が事件の真相に迫っていくというお話で、 ノワール好き、サスペンス好きにはなかなかハマる作品だと思います。
この映画のマ・ドンソクは100%善人ということもあり、主人公としての立場もはっきりしていて、見やすい映画でした。
「トガニ」で悪徳校長を演じたチャン・グァンがまたしても悪役で出ていて、 その笑顔の「悪代官」ぶりが最高です!
6位/「罠 Deep Trap」の殺人鬼ソン・チョル
この作品、評判悪いみたいですが私は結構好きです。
マドンソクの演じた役は一見、面倒見が良さそうな宿の主人ですが、実は冷酷な殺人鬼というキャラクターで、 この手の異常な犯罪者の役はもうマ・ドンソクが演じる姿は見られないかもしれませんから貴重ですよね。
かなりの下衆男で女性から見たら最低なんでしょうが、そう見えているということはマ・ドンソクの演技が素晴らしいわけで、作品が嫌いな人はこの映画のマ・ドンソクの演技を認めているということですからね。。
5位/「新感染 ファイナル・エクスプレス」のサンファ
ゾンビ映画は今まで数えきれないほど世界中でつくられてきましたが、ゾンビと素手で格闘して、 なおかつあの説得力。
考えた人も素晴らしいですが、それに違和感なくあてはまるマ・ドンソクも素晴らしいですね。
完全に主役を食ってしまうキャラで、半分マ・ドンソクのために作られたような映画ですよね。
私もこれがマ・ドンソク初体験の映画でしたが、それまで韓国映画をほとんど見たことなかったので、 韓国映画のエンターテイメント性の高さに驚きました。
この作品だけでもインパクトを残すには十分ですし、“マ・ドンソクここにあり”というのを世界に知らしめたキャラクターだったのではないでしょうか。
4位/「犯罪都市」のマ・ソクト刑事
この映画も最高で、なんといってもマドンソクが強すぎる!
映画の冒頭で刃物をもって暴れる男を、携帯片手に取り押さえてしまうシーンは最高で、 この作品におけるマ・ドンソクの尋常でない強さがあらわれてるシーンで、まさに「ツカミはOK」といった感じです。
最後まで見ても、マ・ドンソクが完全にボコボコにされるところはなく、 傷もこれだけバイオレンスシーンがたくさんある映画なのに、腕を2回程度刺されたくらいですから。。
この映画は悪者キャラも充実していて、中国人組織のリーダーのユン・ゲサンの冷酷非道っぷりは凄まじく、その部下のチン・ソンギュもクレイジーなヤクザで印象に残ります。
手首を切ったり、バラバラ死体が出てきたりと、グロテスク全開の韓国ノワールですが、 笑えるシーンも結構多く、それがうまく緊張感をほぐす役割をしていて、バランスのとれたエンターテイメント作品になっています。
完成度という面から言っても、マ・ドンソクの主演の映画の中では1、2を争うクオリティの作品です。
キャラクターもかっこいいですが、映画自体としておすすめの作品です。
3位/「悪人伝」のヤクザの組長チャン・ドンス
これも作品自体が素晴らしかったです。
思わぬ展開で刑事とバディを組むことになるヤクザを演じていて、 マ・ドンソクのいつもの強いキャラクターをうまく利用したストーリーで楽しめました。
アクションでしめくくっても良さそうな展開をあえて、ああいうカタチでしめたというところが映画的に素晴らしかったです。
でも何より不思議だったのは、こんだけガタイのいいコワモテの男を、 無差別殺人犯とはいえ襲う?ってとこですね。
そうしないとストーリーが進まないのですが、ちょっと無理やり設定すぎな気がしました。
2位/「無双の鉄拳」のドンチョル
これ、最初の方はうだつのあがらない、ついウマイ話にだまされてしまうっていう男なんだけど、 それが映画後半から一気にヴァイオレンス全開になるっていう切り替わりが気持ちいいですね。 昔の高倉健さんとかがやってた任侠ものみたいな感じで、よ!待ってました!って感じの展開が最高です。 振り幅っていう意味では、ノワール系のマドンソクでは最大の振り幅ですね。 これも結構コメディ色が強くって、いい旦那なんだけどイマイチ不器用で、奥さんを悩ませてるとこが、 男的には「あーわかるわかる」って感じでいいですね。 子分役の二人もいい味だしていて、完全なコメディリリーフの役回りで、 なんか昔のジャッキーチェンがサモハンキンポーとかといっしょに出てる映画に登場する おもしろい脇役の人たちみたいな感じでしたね。 五福星とか大福星とかそのあたりかな。 いろんなマドンソクを一本で味わえる映画で、マドンソクの入門編として最適な一本となってます。
1位/「ファイティン!」のアメリカ帰りの男マーク
映画の完成度とかは抜きにして、キャラクター的には納得の一位ではないでしょうか。
主人公が、幼少期にアメリカに養子に出されて、人種差別でいじめられますが、 スタローンの「オーバーザトップ」に感化されてアームレスリングをはじめてチャンピオンにまでのぼりつめた男という設定で、 半分マ・ドンソクの自伝的作品と言ってもいいですよね。
そのせいか、いつも以上に素直に役にハマってる感じがして、ストーリーもわかりやすいし、 完全にスタローンの映画を見ている雰囲気になるんですよね。
この映画見たら「マブリー」って言われるのも納得いきます!
ヤクザを演じてる時のマ・ドンソクの影は微塵もでてきませんし、お約束の乱闘シーンもあるんですが、 お約束程度って感じで、、やっぱりアームレスリングのシーンがそれ以上に興奮させてくれます。
素直に「ガンバレ」って応援したくなりますし、完全にマ・ドンソクのアイドルムービーになってますね。
妹の娘で登場する子が、彼を紹介する時にいつも「オジサンは顔はブサイクだけど...」と前置きするところが地味に笑えましたが、確かにこのルックスで韓国や日本でも大人気で、 もうすぐマーベル作品まで公開されるというマ・ドンソク・バブルはまだまだ当分の間、続きそうですね。。
フェニックス~約束の歌~/ベタな作品と侮れない韓国映画の底力
マ・ドンソク目的で、それほど期待しなくて見た映画「フェニックス~約束の歌~」。
泣きの名作という評価で「ROCKIN' ON HEAVEN'S DOOR」というタイトルからも、ちょっとベタすぎて、マ・ドンソクが出演していなければ絶対見ていなかったであろう作品ですが.....評判通り、泣かされました!
人気アイドルのチュンイは傍若無人な態度で困らせていたが、クラブでの暴行事件で世間を騒がせたため、末期ガン患者のためのホスピスで社会奉仕活動をすることとなる。
いやいや仕事をしていた彼だが、この施設が命の期限を宣告された人々が最後の時を過ごすホスピスであることを知り、少しづつ施設の人々の中に溶け込んでいく。
そんなある日、ホスピスが資金繰りに困っていることが発覚し、ホスピスの患者で結成していたバンド‘フェニックス’のメンバーは、賞金のかかった音楽番組のオーディションに出場しようと、チュンイに協力を頼むのだが…。
まず何といってもキャラクター描写が見事ですね。
登場して間もなく、一瞬でわかるようなわかりやすいキャラクター設定がなされていて、しかも一通り紹介したあと、彼らがどのような病に侵されていることなどを順に説明していく丁寧さ。
さすがにちょっと説明過多かなとも思いましたが、ファミリー映画であるためにわかりやすく
説明しているのかなという感じでした。
老若男女だれが見ても感動できるような映画作りになっています。
日本でいえば「三丁目の夕日」あたり.....なのかな?
ただ舞台となるホスピスが、余命を受け入れて最後の時を過ごすという場所というあたりが、韓国人.....というより日本人にも共通する死生観が描かれていて、そこが良かったですね。
しかも年老いた人もいれば、10歳の幼い女の子までいるという設定、、この時点で涙腺がゆるんできてしまします。
ガッツリマッチョになる前のマ・ドンソクがいい味だしてますね。
今のマ・ドンソクにも通じるようなコワモテだけど根はいい人的なキャラで、クライマックスの展開も含めて、彼の演技は作品を魅力的に見せる一因になっています。
こういうツンデレのキャラクターを見ると、いつかマ・ドンソク主演で韓国版の寅さんのような映画も見てみたいですね。
最後の映像でのコメント部分は、ちょっと反則ですね、あれは。
ベタすぎるのに泣けてしまいます!
主演イ・ホンギのアイドル(?)映画として作られた作品なのかわかりませんが、そういった趣旨でも職人的な脚本で、誰もが楽しめるエンターテイメントに仕上げるあたり、韓国の底力を感じますね。
もちろん日本映画でも、アイドル主演で良い映画はあるのですが、ここまで突き抜けた良作があるかと言われると.....演技力も含めて、日本と韓国の差を痛感した作品でした。
殺人者/マ・ドンソク主演の血塗られた小さな恋のメロディ
私が見たマ・ドンソクの映画の中で、彼が最も暗いキャラクターを演じている作品.....「殺人者」。
母のいないヨンホは、田舎で犬飼いの父と二人で暮らしていた。
ある日、ソウルからきた転校生の少女と仲良くなるが、少女が酔った母親とともにヨンホの父親に送ってもらった次の日から、彼女の態度が一変する。
彼女から父親に聞いてと言われたヨンホは、ある夜、父のあとを追うとそこで見たものは.....という展開です。
マ・ドンソクが主演の映画ではありますが、物語としては彼の子供役のヨンホと少女ジスの目線で語られている作品です。
二人とも不幸な家庭環境ということもあり、いつの間にか惹かれ合う彼らの青春恋愛模様が描かれる前半から一転、血塗られた家系の話になる展開は少し急ぎすぎてる感じもしました。
多分予算がなかったからだと思いますが、上映時間も75分ということもあり、もう少しキャラクター描写を深く描いていれば、かなり傑作韓国ノワールになったのではないでしょうか。
しかし短い時間ながら、ドラマ部分は面白かったですし、ラストは日本の映画ならひとつ前の段階で想像させながら終わらせる結末にするところを、さすが韓国、キッチリすっきり終わらせてくれます。
今の姿からは想像もつかないくらい暗いキャラクターを演じているマ・ドンソクですが、やはり彼はしっかりした演技スキルを身につけている人だとあらためて感じました。
言葉の少ないキャラクターながら、その凶暴性はひしひしと感じますし、時折見せる狂気の表情は、、、マジ怖いです!
今でもよく見せる困った顔の時の目を、さらに闇の奥に落とし込んだような、どう見ても殺人犯にしか見えない目が凄いです。
やはり連続殺人犯はゲッソリした表情が似合いますので、体格的にもう今のマ・ドンソクでは.....無理でしょうね、こういった役は。
「罠〜Deep Trap〜」は表の顔と裏の顔が違っていましたが、この「殺人者」では、ある意味地続きになっていて、そこが「罠」よりもっと凶悪な匂いがする男になっています。
彼の息子と転校生の少女を演じた二人も、初々しい演技で好感もてますし、息子役の子の堕ちていく感じが、何となくキム・ギドク風の演出で怖かったです。。
結果、担任の先生の何気ない一言がそれぞれの運命に影響を及ぼすのですが、口は災いのもとというか、子供と接する時は軽くものを言ってはいけないということが教訓となりました。
映画をたくさん見ていくと、子供の育て方って大変だなぁとしみじみ思う今日この頃です。。
群盗/熱い黒澤オマージュを感じられるキムチウエスタン
「悪いやつら」のユン・ジョンビン監督が、韓国時代劇を西部劇のフォーマットを介して魅力的なキムチウエスタンに仕上げた傑作「群盗」。
朝鮮王朝末期の1862年、民衆は悪徳官僚や貴族の支配の下、納税と強制労働で自由を奪われ、苦しい生活を強いられていた。
ある日、と畜人トルムチは武官のユンからある女性の殺害を命令されるが未遂に終わる。
口封じのためにユンの部下たちによってトルムチの家は燃やされ、トルムチはなんとか生き延びるが、同居していた母と妹は焼死してしまう。
復讐に燃えるトルムチは、ユンの屋敷に乗り込むが、ユンの武術に全く刃が立たずに窮地に陥ったところを盗賊団に助けられる。
腐敗した領主や役人の打倒を掲げる盗賊団の一味となったトルムチは、武芸を磨きユンへの復讐を誓うのだが.....という展開です。
昔、三池崇史監督の「スキヤキウエスタン ジャンゴ」という企画倒れも甚だしい最悪の映画がありました。
「七人の侍」や「用心棒」といった黒澤作品が西部劇に影響を与えていたことを考えると、なぜ日本人の創造性は下衆な方向性ばかりになってしまったんだろうと悲しくなりました。
三池監督は「殺し屋1」やリメイク版の「十三人の刺客」など個人的に好きな作品もあるのですが、良作と駄作の差が激しいイメージで、特に企画モノは大体ハズレが多い気が。。
それはさておき、この「群盗」という作品は、オモテ向き西部劇風の装飾がされてますが、明らかに黒澤映画のダイナミズムに影響を受けている作品に感じました。
イーストウッドが出演していたマカロニウエスタンの雰囲気は確かに感じますが、私が西部劇に疎いということもあるのですが、民と一緒になって悪をやっつける構図は明らかに「七人の侍」だし、そもそも戦う目的が苦しんでいる民の生活を潤すというためのボランティア精神ところも「七人の侍」イズムですよね。
主要な盗賊が6人にいて、最後に「菊千代」をモデルにしたような貧しい家の出の主人公トチが加わる展開.....そのままです。。
盗賊の村が険しい山の中にあるのも、最後の決戦の場面で「七人の侍」風の絵がほしかったためにも思えますし、、そういったところから西部劇は詳しくなくても「七人の侍」を見ていたら、映画をより楽しめるようになっています。
タイトルロールのポップな感じや、章ごとに話を区切ってるところなどは、明らかにタランティーノですが、そういった古今東西のエンターテイメント映画へのオマージュがたくさん登場し、監督の過去の映画に対するリスペクトが感じられてとても好感がもてます。
何より一番素晴らしいと思ったところは、韓国時代劇をちゃんと描いているところに西部劇エッセンスを入れているところです。
先に述べた三池監督のジャンゴは、無国籍風を狙ったのはわかりますが、それ故、世界観がぼんやりして、キャラクター的にも中途半端な演出だったこともあり、全然映画の中に入り込めませんでした。
なぜ素直に時代劇、というか用心棒の世界観にしなかったのか疑問です。
「群盗」は西部劇や他の映画の要素は、よりポップで見やすく作品世界に入り込みやすくするために使われているだけで、物語はあくまで時代劇として語られているため、作品の芯がぶれず、圧倒的なエンターテイメントとして見れるんですよね。
確かに、ナレーションが多く説明過多になってるところは気になりますが、大勢の人に見てもらいたいという配慮がそうさせているのではないでしょうか.....でも、ちょっと多いかな。
キャスト的には、主演のハ・ジョンウはじめ、マ・ドンソク、チョ・ジヌンらが個性的なキャクターを演じた盗賊グループはもちろん素晴らしいのですが、カン・ドンウォン演じる敵キャラのチョ・ユンが一番印象に残りました。
冷酷無比なキャラクターだけに俳優としてもやりがいのある役だったと思いますが、ラストの子供を抱きながら戦うシーンに象徴されるように、人間くさい部分を心にしまい、あえて鬼として生きる姿がとても印象に残りました。
イケメンでなければ、もっと男性からも支持されるキャラクターだった気もします。
140分があっという間に感じましたし、やはり韓国の映画界はエンターテイメントをつくるのが上手いなぁということをあらためて感じた作品です。
この作品を見てから、あえて「スキヤキウエスタン ジャンゴ」を見て、ツッコミながら見るというのも違った意味で面白いのではないでしょうか。。おすすめはしませんが。。