狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

パラサイト/圧倒的なエンタメで格差社会を描く、映画の新たなフォーマットを創造した大傑作

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映画館が再開されて一週間以上たちました。
新作がポツポツ公開されてる中でロングランを続けているのが韓国映画「パラサイト」
ご存知の通り、今年2020年のアカデミー賞でアジア映画としてはじめて作品賞を獲得した作品です。
昨年のカンヌ国際映画祭パルムドール作品でもあったので、先行上映の時に期待と不安の半々状態で見に行きましたが...びっくりしました!
何が一番驚いたというと、超おもしろい!
カンヌでパルムドールをとった作品でこれほどエンタメ的におもしろい作品は94年のパルプ・フィクションぶりくらいではないでしょうか。
フランスで催される映画祭ですので、いわゆるミニシアター系のような作品が賞をとるイメージですからね。
前年度パルムドール万引き家族もおもしろい作品ですがエンタメ的におもしろいか...と言われると日本人以外はそこまでピンとこない作品でしょう。
でもこの「パラサイト」はどこの国の人が見ても笑えて、そして驚いて、最後に余韻が残る...そんな映画ですね。

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「パラサイト」を最初に見た時は、まだポン・ジュノ監督の作品は「オクジャ」しか見たことがなかったので、ファンタジー系の映画作家の方なのかな?と勘違いしていました。
全作品おもしろいですし、特に韓国でとった作品はかなり映画的に魅力のある作品です。
監督もインタビューで語っていましたが、ハリウッドの監督はとにかく役割が多すぎて、カメラに集中できなかったらしいので、馴染みの環境で久しぶりに撮ることができ、かつハリウッドでの経験も生かされた本作が最高におもしろい映画であったのは頷けますね。
とにかくテーマが秀逸です。
現在、世界中で問題になっている格差社会をこれだけエンターテイメントたっぷりに描き、かつ底辺の人々の悲哀も感じられる作品はまずないでしょう。
ジョーダン・ピール監督の「US」格差社会がテーマのエンタメ作品ですが、ホラーテイストに重点がおかれている分、格差の問題があまり表面的には語られていませんね。
「パラサイト」は半地下という韓国特有の家で暮らす底辺の家族の描きながらストーリーを展開させています。

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冒頭はコミカルに家族のキャラクターを紹介していて、その後IT社長の娘の家庭教師として上流階級にもぐりこんだ長男をきっかけに、長女、父親、母親と次々に家族がパラサイト(寄生)していきます。
このあたりの描き方は痛快で、ちょっとうまくいき過ぎな感も否めませんが、そこは「映画」ですのでお許しを..という感じに面白おかしく描いていきます。
そしてお金持ち家族がキャンプに出かけた夜...事件が起こるのですが、こちらは映画を見てお楽しみください。
この後の展開は予告編でも少し見せてはいますが、予想の上の上をいく展開で、近年のハリウッド映画でもほとんど記憶にないくらいの素晴らしい展開です。
映画後半はサスペンスであり、ホラーでもあり、ジャンルのごちゃ混ぜ感が凄くて、こういった作品はこれから世界的にも撮られていくでしょう。
それくらい時代をリードする作品です。
「パラサイト」を見てから、本格的に韓国映画にのめりこんだ私ですが、韓国映画全般に言えるのは、サスペンス映画でも笑いの要素を随所に入れてますよね。
これは韓国映画の伝統なのでしょうか?
ある意味、そういった要素も新鮮で、独特のグロテスクで過激な暴力描写もあり、現在韓国映画にハマっている私です。

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良い映画に共通して言えることですが、この作品、キャストのアンサンブルが素晴らしいです。
半地下の家族も上流家族も両方とも、完璧なバランスのキャスティングですね。
物語を進行させる上で仕方ないとはいえ、上流家族の奥さんが少しオツムが足りなさ過ぎなところだけ気になりましたが。。
ポン・ジュノ監督は基本的には演技は俳優に任せているらしく、美術や照明などのカメラまわりの部分に全力を注ぎ、俳優が演技をしやすい環境を整えることが自分の役割だと語っています。
俳優の演技が自然に感じるのはそのためでしょうが、現場の雰囲気が良くないとなかなか出来ないことですね。
演技を俳優に任せられるのも、ポン・ジュノ作品は常に名優が出演していますし、ポン・ジュノ作品に不可欠な俳優といえばもちろん、韓国の名優ソン・ガンホですね。
韓国映画が世界に進出しはじめた初期から、数多くの名作に出演し、いろんな役を演じている俳優です。

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まだ私が韓国映画に詳しくない頃、彼の出演している「タクシー運転手」という作品が気になって見に行きましたが、本当に素晴らしい作品で、その中でもソン・ガンホ演じるタクシー運転手の喜怒哀楽すべてが発揮されているキャラクターにとても魅了されました。
その時の記憶もあり、彼が出演していたというのも「パラサイト」を期待して見に行った理由のひとつです。
韓国映画を浴びるように見ている最近ですが、やはりソン・ガンホは特別な俳優のひとりですね。
基本的には、この映画の冒頭部分のように、どこにでもいるおじさんを演じさせたら右に出るものがいないという俳優ですが、男気ある役や時には二枚目路線の演技も出来る優れた俳優ですね。
でもカメレオン俳優のように個性がバラバラというわけでなく、彼本来がもっているキャラクターなのかもしれませんが、やさしさに満ちたユニークなおじさんという雰囲気はどの作品にも現れている気がします。
最初はカンヌでパルムドールを撮った作品なので30分くらい我慢して見るのを覚悟してましたが、冒頭から映画に入り込み、とにかく展開が面白く全く間延びするところもなく、集中して楽しめる作品でした。
中盤の展開が変わる部分に出て来る「ある仕掛け」を見るには、やはり劇場で味わうべき感覚だと思いますので、出来れば公開中に映画館で見てもらいたい作品ですね。
この作品を見たら、もしかすると日本映画が見れなくなってしまうかもしれませんが。。

 

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