狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

貧富の差が拡大した時代に「NO」を叩きつけた鬼才のSF映画/ゼイリブ

f:id:rieva201898:20200614001551j:plain

 

鬼才ジョン・カーペンター監督の作品で個人的に一番好きなのがゼイリブです。

10年以上ぶりに見ましたが、この作品、大人になればなるほど確実に面白い映画だと気づきました。

失業者があふれる時代で、日雇い労働者として働く主人公ナダが、ある日、大量にサングラスが入ったダンボール箱を見つける。

そのサングラスをかけて街を歩くと、広告看板や雑誌が「命令に従え」や「権力に従え」などの不気味な命令文で書かれているように見えてしまう。

しかも街中の裕福そうな人々の大半は骸骨のような恐ろしい顔をしているように見える。

実は地球はエイリアンによって支配されていることに気づいたナダは、労働者仲間にこのことを打ち明けるのだが.....というストーリーです。

富と名声を得ている人たちは、我々一般人とは違う人種なんだろうという印象を誇張して、エイリアンに見立てているところが抜群に良いアイデアだと思います。

コロナパニック初期の大変な時期に、政府がとった最初の対応がマスク2というところが、あまりに浮世ばなれしてあきれてものが言えない今の状況にすごく当てはまりますね。

政治家や富裕層がエイリアンであれば、一般人のことを全然理解できないのも納得いきますから。。。

f:id:rieva201898:20200614001623j:plain

この作品がつくられた80年代後半のアメリカは、いわゆるレーガノミクスとよばれる新自由主義的思想にもとづく経済政策で貧富の差が拡大しはじめた時代で、そんな社会に「NO」をたたきつけるジョン・カーペンター監督の強いメッセージを感じとれる作品です。

、、、というと何かおカタい映画にとられそうですが、超エンターテイメント作品ですし、予算がないのをアイデアでカバーするという、いつもながらのジョン・カーペンター・イズムが発揮されている作品です。

主人公を演じるのは、WWFWCWで活躍したプロレスラー・ロディ・パイパー

今でこそロック様(ドウェイン・ジョンソン)やバティスタ(デイヴ・バウティスタ)などプロレス出身の俳優がポジションを確立していますが、この映画が公開された1988年当時は、まだプロレスラーが映画で主役をはること自体考えられなかった時代です。

そんな時代に現役プロレスラーであるロディ・パイパーを主役にした監督の英断に拍手を送りたいです。

実際、アクションシーンはかなり説得力がありますし、少し尺が長く感じられる中盤のスープレックスまで繰り出される喧嘩シーンの迫力を考えると、このキャスティングは正解だったと思います。

日本のプロレスラーと違って、アメリカ、特にWWEでトップに立つには演技力も必要ですからね。

f:id:rieva201898:20200614001709j:plain

そして謎の美女役で登場するメグ・フォスターの存在感がいいですね。

敵か味方かわからない魅力的なブルーアイズとクールな演技で、ストーリー展開に重要な役を好演しています。 エイリアンをフリーメイソンや宗教団体に置き換えて見ると、現実的に想像できますし、色々な苦労や挫折を経験した大人が見ると、フィクションとノンフィクションの狭間みたいな感覚で楽しめること必至の作品です。

ジョン・カーペンターの作品はSFであれ、ホラーであれ、常に人間心理を描いた映画を作りますが、そんな彼が現在のコロナでのパニック状態を見てどう感じているのかが気になります。

年齢が年齢ですので作品のペースが落ちているのは仕方ないですが、このコロナパニックに刺激され、彼が新たな興味深いアイデアをもとに作品を撮ってくれることを願っています。

 

f:id:rieva201898:20200529170436j:plain