「ランボーラストブラッド」はまるで「ロッキー4」のような映画だった!?
70歳を過ぎてもいまだパワー健在のシルヴェスター・スタローン渾身の一作「ランボー ラストブラッド」。
20年ぶりのまさかの続編だった前作「ランボー最後の戦場」から11年ぶりの続編。
前作のラストで家路についたランボー、それから10年あまり平穏な日々が続いていた....はずなのに、敷地全体に広がる地下道を作り、武器を蓄えるあたり、、さすがランボーです。
今回のランボーは、今までのランボーシリーズの総括も兼ねながら、スタローンのもうひとつの代名詞「ロッキー」シリーズのスタイルも感じさせる作りで、特に80年代空前のヒットとなった「ロッキー4」によく似た作品だと感じました。
ストーリーについては、ウィキペディアが公開中の映画にも関わらずまさかのネタバレをしているので、そちらを参照ください。
しかしこの作品については、ネタがわかってから見ても十分楽しめる映画です。
ストーリーに感動する類の映画ではなく、あくまでクライマックスのアクションを楽しむタイプの映画で、作品の8割がクライマックスへのネタ振りになってましたし、そういう意味で良く出来た映画でした。
では、「ロッキー4」に共通する部分を5つ挙げていきます。
1.右翼的思想
まず1つめは、当時や現在のアメリカの体制にどっぷりなところ、つまり「ライトウイング」という点です。
「ロッキー4」は当時の東西冷戦の構図を思いっきり見せつけた映画で、 最後には当時のゴルバチョフ書記長にそっくりなキャラクターがロッキーに対しスタンディングオベーションをして共産主義崩壊を予兆したような絵になっていました。
今回はメキシコ人に対して物議を醸したくらい醜い描き方をしていて、 まさしくトランプ大統領が言うメキシコの悪いイメージをそのまま表現しています。
しかし、この点に関しては随所で逆説的な皮肉っぽい表現もされていますし、メキシコ人というよりただ悪い人間を描いてるだけで、メキシコ側でも協力してくれる人物が登場することから、そこまでメキシコに対しての差別的な感じは受け取れませんでした。
しかしランボーシリーズ自体が2と3が完全な右翼映画なので、そういった目で見られるのも仕方ないといえば仕方ないのですが。。
2.復讐劇
次は大切な人を失った悲しみによる復讐劇という点が似ています。
「ロッキー4」は、ロッキーの親友でありライバルでもあるご存知アポロ・クリードが、エキシビションマッチにも関わらず対戦相手のドラゴに撲殺されたことによって、ロッキーがアポロの復讐を果たすべくドラゴに立ち向かっていく話でした。
「ランボーラストブラッド」はランボーが前作で帰国してから、ずっと一緒に暮らし実の子供のように可愛がっていた少女ガブリエルが、拉致され売春宿に売られ、しかも薬づけにされて悲しい最後を遂げたことにより、怒りにふるえるランボーがメキシカンマフィアに復讐していく展開です。
これまでのランボーシリーズでも途中で殺される仲間は描かれていましたが、あくまで任務を遂行中の出来事であり、 戦いの動機が復讐というのは今回がはじめてです。
それだけに怒りの度合いも凄いのですが、その割に感情的というより用意周到に計画された戦いだったのが意外でした。
3.準備
マフィアとの戦いに備え、家中に武器や罠を仕掛けるシーンが、ロッキーシリーズの試合前のトレーニングシーンを彷彿とさせる映像だったという点です。
「ロッキー4」のようにスポーティなノリノリな曲を流せば、そっくりになったのではないかというくらい、編集や映像の感じが似ていました。
ランボーの住む牧場つきの広い家全体が戦場と化しますが、まるでそのためにこの広大な土地にランボーを住まわせたのではないかというくらい、完全にランボー得意のゲリラ戦に適した土地ですね。
しかも地下道が作られている時点で、絶対にいつかここで戦闘するために作ったのではないでしょうか。
今回は敵は鍛えられた兵士でも何でもないのに、ぬかりのない準備をしている点が、いかにランボーの怒りが頂点に達していたかを象徴してるシーンです。
4.クライマックス
クライマックスの戦闘シーンがロッキーの試合のシーンを彷彿とさせるカメラワークでした。
今回はたったひとりで戦うということもあって、しかもほとんど地下の閉鎖的な空間ということもあり、狭いリング上で戦うロッキーにダブってしまいました。
カメラワークもほとんどが「寄り」の絵になっていて、ロッキーで殴られて汗と血が飛び散るようなシーンが、ここでは敵の肉体が飛び散る(!?)シーンになってます。
前作のランボー最後の戦場のような昼間の屋外でのグロテスクなシーンは今回ありませんが、 夜やトンネルのような暗い場所では、相変わらずのエグいシーンが満載で、あまりにも漫画的な倒し方だったこともあり、劇場内でも笑いがおきてました!
5.スタローン映画のスタンス
最後は、今作や「ロッキー4」だけではなくスタローン全出演作に言えることですが、 基本的には80年代のハリウッドのアクション映画のようなわかりやすい映画を撮り続けていることです。
これはスタローンが脚本に携わっている限り、絶対的にそうなってしまう要素ですね。
だからなのか、脚本に関わっていない「クリード」の一作目は、明らかに他のスタローンの映画のトーンと違った感じでした。
脚本に参加した二作目はドラゴが再登場することもあり、ロッキーテイストに仕上がってましたからね。。
以上が「ランボーラストブラッド」が「ロッキー4」に似ているのではないかという点です。
今回の敵は残念ながらランボーシリーズ史上最弱の敵でした。
そこががっかりした点ですが、ランボーも70歳を超えているので、この程度の敵で仕方ないのでしょうか。。
色々賛否.....というか否が多く論じられている作品ですが、コンプライアンスが支配する時代に、まだこんな滅茶苦茶な映画を作り続けるスタローンに拍手を送りたいです。。