狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

「透明人間」を見る前に見るべき作品その5/スピルバーグの「激突」

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7月10日から公開の「透明人間」を見る前に見ておきたい最後の映画は若き日のスティーブン・スピルバーグが撮った名作煽り運転ムービー「激突」です。

今回の「透明人間」は主人公の恋人の偏執的ストーキング行為が描かれているようですが、ストーカー的恐怖で一番にイメージしたのが「激突」です。

数ある名作を手掛けているスピルバーグ監督の原点といってもいい作品で、彼のフィルモグラフィーの中でも個人的にベスト3に入るくらい大好きな作品です。

スリラー映画の大傑作でもある「ジョーズ」はこの作品がなければ成し得なかったでしょうし、スピルバーグの卓越した映画センスがこれでもかというくらい炸裂しています。

踏切で車ごと押されるシーンや、ガス欠で坂を下るシーンなど手に汗握る名シーンのオンパレードで、90分弱の尺があっという間に感じる映画ですね。

主人公の表情と車、車内のメーター類、そして追いかけるトレーラーと、基本この4ショットというミニマムな構図で描かれているのを忘れるくらいの臨場感あふれる映像で、映画を学ぶ人にとってはうってつけの教材になっているのではないでしょうか。

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私が初めてこの映画を見たのは、子供の頃にテレビの映画劇場だったと思うのですが、「ジョーズ」や「未知との遭遇」のノリで見始めると、さえないオジサンがただトレーラーにいやがらせさせられるだけで、なぜこれが面白い映画扱いになっているのかわかりませんでした。

しかし、尋常じゃないスピードで追いかけてくるトレーラーが子供心に凄い恐怖を感じ、途中に寄ったレストランでの「犯人は誰でしょう」的なサスペンスシーンくらいから完全にハマり、さえないオジサンをいつの間にか応援するようになり、ラストは主人公と一緒に泣き.....はしませんがガッツポーズするくらい、よくわからないカタルシスを感じられました。 

スピルバーグはこのトレーラーを怪獣にみたてて撮ったようですが、運転手の顔が映らないということもあり、トレーラーという無機質な表情をした殺し屋が追いかけてくるようで、ある意味怪獣より恐ろしい物体に感じられます。

TV映画という極めて限られた予算の中で、この緊迫感と迫力は凄まじいですし、全編を通してセリフが削ぎ落とされていることが功を奏して、国籍・人種・年齢を超越した、誰にでも楽しめる一級のエンターテイメントになっています。

当時スピルバーグ25歳.....すでに職人の域ですね。

 この作品も含め、初期の時間も予算もない状態で作品を撮った経験が、現在の異様なまでの早撮りで、常に80点以上の映画を撮り続けている礎となっている気がします。

このように狂ったストーキング行為は、いろんな映画で表現されてきましたが「激突」以上に「顔の見えない」透明人間的なストーカーの恐怖を描いた作品には出会ったことがありません。

さて「透明人間」のストーカーっぷりはどれぐらい怖いのか.....楽しみですね。。

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