狂った朝日 と 汚れた血/映画部

映画や海外ドラマに関するレビュー及び思い入れのある作品について語ったり、それに付随した思い出・ライフスタイル情報を提供いたします。

ザ・ハント/現代アメリカを痛烈に皮肉った人間狩りムービー

人間狩りを題材にしたサバイバル・アクション映画「ザ・ハント」。

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森の中で12人の男女が目を覚ます。

猿ぐつわをされた状態で、しかもここがどこなのかは誰も知らない。

目の前におかれた巨大な木箱を見つけ、中をあけると1匹のブタとたくさんの武器が入っている。

そしてほどなく、周囲に銃声が鳴り響き、何人かが目の前で狙撃される。

わけのわからぬまま彼らは、目の前の武器を手に取り逃げ惑う。

実はそれは「マナーゲート」と呼ばれる一部の富裕層によるスポーツ感覚の「人間狩り」であったのだった。。

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予告を見て、B級作品を楽しもう.....的な感じで鑑賞しましたが、意外と予算がかかっているようだし、予想と違った方向で展開していくあたり、思っていたより随分楽しめました。

アメリカでは今年の3月の公開で、映画館が閉まるか閉まらないかという時期で、 タイミング的に最悪だったようですが、この作品はトランプの政策を支持する、かなり○○な白人とリベラル系の富裕層の対立構造で、しかも人間狩りするのはトランプ側ではなくリベラルの方というのがミソですね。

その観点がおもしろくて、トランプ支持者は差別したり動物虐待したりする悪者だから、 正義の鉄槌を下しても問題ない!...という極端すぎる発想になっています。

木村太郎さんいわく、トランプは絶対戦争を起こさないから良い大統領だった...らしいのですが、小悪いことはいっぱいしていても、戦争はトランプは仕掛けてないんですよね。でも他は滅茶苦茶でしたが。。

これがもし、トランプ支持者側がリベラルをハントする作品なら、あきらかにリベラルを標榜するハリウッドが仕掛けてきそうな作風ですが、リベラルがトランプ支持者を襲うという逆の構造になっていることで、どちらに対しての皮肉も表現していて、 こういう主張がすごくセンスがあると思いました。

でも富裕層に対する偏見はかなり感じましたね。。

よくこの企画がハリウッドで通ったなぁという感もあり「 ハンガーゲーム」のように大作感を出すより、これくらいの規模の方が、作品の意図が伝わりやすいですね。

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この作品を監督したクレイグ・ゾベルの「死の谷間」という作品は、登場人物が三人しかでてこない核汚染後の世界を描いた地味なSFでしたが、個人的にツボにハマった映画でした。

その作品でも生命に対する主張が見えたのですが「ザ・ハント」も中盤くらいまでは監督の主張が見えました。。中盤くらいまでは。

また、劇中にも出てきますが、ジョージ・オーウェルの「動物農場」という小説のモチーフが結構使われていて、 この小説を大まかに知っているともっと楽しめるんじゃないでしょうか。

私も見終わってから、この「動物農場」について色々調べてみて読みたくなりました。

ピンク・フロイドのアルバム「アニマルズ」のモチーフにもなっている小説みたいですね。

そして、ヒラリー・スワンク以外の俳優が全然知らない人ばかりということもあり、最初の方では誰が主役かわからずに見ていて、この人が主役なのかな...と思って見ていたら死んじゃうし、 次はこの中の誰かが主役なのかな...と思ったら、またみんな死んじゃうし!という感じで、 ホラー映画とか映画的第三国の作品を見る時のような新鮮な感じがありました。

この作品については、前情報はほとんど入れずに見た方が良いですね。

また唯一知ってる女優のヒラリー・スワンクが、素晴らしかったです。

オスカーを二度も受賞しているのに、こんなB級アクションにでている時点で凄いですが、彼女もこの映画の設定や主張が面白いと思って出演したんでしょうね。

意外に出番は少ないのですが、アクションシーンも説得力あってさすがの演技でした。

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あとはドンを演じたウェイン・デュヴァルなんかもいい味だしてましたが、やはり主役のベティ・ギルピンがかっこよかったですね。

あまりこの女優さんについて知らないのですが、アクションがかっこよかったですし、この作品きっかけで、アクション系の映画で出てきそうですね。

法廷ものとかITものとかも似合いそうな顔でもありますね。

今、アクションが新しい時代に突入して、アクションがしっかりできることがスターになる近道となっていて、結構な大物系の俳優もスタントなしのアクションをこなしていているので、なかなかその中で主役を掴むのは大変だと思いますが、ベティ・ギルピンは今後注目したい女優のひとりですね。

SNS使いも含め、アメリカの世相をすごく反映している作品ですが、単純にアクション映画としても全然楽しめるのでポップコーンムービーとして十分楽しめる作品ではないでしょうか。。

 

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